動手帳廻死霊

=================================================
■0.あらすじ
=================================================

  ある夏の蒸し暑い日の事である、神明神社には相変わらず人影が微塵も
  無い。どうも人里は最近、「毎夜、燐光のような光が空にまいあがる」
  という噂でもちきりなようだ。
  「蛍だ」とか「幽霊だ」とかいろんな噂がそこいらで右往左往している
  。幽霊ならうちで厄除け祈願でもしに来ればいいのにと神巫は思った。

  そんな事を考えながらお茶を濁していると、遠くで足音が聞こえる。

  「黒奈かしら?それとも参拝客?」

  と神巫はぽそりと呟く。が、その読みは両方ハズレであった。

  「伊沙弥 神巫さんですか?お手紙を預かっております」

  「あら、ご苦労様です、ついでに参拝でもして行きませんか?」

  「あ、申し訳ない、まだ仕事が残ってるので、遠慮しておきます」

  あっさりと断られ、しぶしぶと手紙を受け取り、男は去っていく。
  逃げるように去る男を眺める神巫。その後、特に他にする事も無い
  ため、神巫は手紙を開く。
  そして手紙の内容を見て神巫は驚愕した。

  その内容は詐欺師である黒奈の死に関する一報だった。

  「う・・そ・・?」

  突然の朗報に動揺する神巫、それもそうだろう、黒奈が簡単にお陀仏す
  るとは考え難いからだ。
  だんだんと不安が重なっていく神巫を尻目にまたその耳には石段を登る
  足音が入ってくる。その音の方向へ振り返ると、そこには。

  黒奈の姿があった。

  「なんだ、あんたのイタズラか」

  「なんだ、茶も出さずに第一声がそれか、イタズラって何の事だ、心当
  たりがありすぎるから具体的に話せ」
 
  「あんたが死んだって内容の手紙が来たのよ、これ、出したのあんたで
  しょ?」

  「・・・・・いや、出したのは私じゃないんだが・・・なんというか」

  「何よ」

  「死んだってのは事実だ」

  「からかってるのかしら」

  「いや、事実だ、私は確かに死んだ、んで何故か生き返った。というよ
  り人里の人間は最近バタバタ死にまくって私みたいに生き返ってる珍現
  象をそこいらで起こしてるぜ?」

  「どういうこと?」

  「さあね、最近流れ始めた噂と関係でもあるんじゃないか」

  「むう・・・」

  少し考え込む神巫、そして何かが吹っ切れたかのように神巫は飛び立っ
  た。

  「おい!神巫!どこ行くんだ?」

  「考えてみなさいよ、人が死ぬ、そして生き返る、どう考えても普通じ
  ゃない、これは異変よ! い・へ・ん!」

  そう言うと一目散に人里の方向へと飛び出していった。

  「やれやれ、あいつ異変になると基本ああだしなあ・・・まあいいや、
  中々面白そうだし、あいつについて行けばなんかあるかもしれん」

  そして黒奈も神巫を追ってさっきまで死に場所だった人里に向かって飛
  び出して行った。
  


=================================================
■1.キャラ設定
=================================================


                                                                                                • -

◇プレイヤーキャラサイド

                                                                                                • -

 ○伊沙弥の巫女
  伊沙弥 神巫(いざなみ いちこ)
  izanami itiko

  種族:人間
  能力:霊力を操る程度の能力

  割と常識人な神明神社の巫女さん。昔こそ厚い信仰のあった神社だが、
  いまではからっきしとなってしまった神社の巫女さん。

  異変解決でどうにか信仰を取り戻そうと考えるが、うまくいった試しな
  んか一度も無い。今後も無い。


  黒奈が死亡したという一報を受けたその直後、普通に何事も無く神社に
  赴く黒奈と最近の燐光うんぬんの噂から異変の匂いを嗅ぎ付け、解決に
  向かう。


 ○天性の詐欺師
  鳴神 黒奈(なるかみ くろな
  narukami kurona

  種族:人間
  能力:電気を操る程度の能力

  性悪天才詐欺師さん。

  好奇心と興味本位が原動力の暢気な気分屋だが、頭は非常にキレる。


  人里にて【仕事】の最中に不慮の事故で死亡してしまうが、次に目が
  覚めると特に何事も無いかの如く、復活していたのでとりあえず神社
  に赴いた。

  神巫が異変だと大騒ぎして飛び出して行ったため、興味本位だけでつい
  ていってみる事にした。
 

                                                                                                • -

◇敵キャラサイド

                                                                                                • -

 ○1面ボス 夕刻の極楽
  一基 満足(ひともと まんぞく)
  hitomoto manzoku

  種族:妖怪
  能力:心を満たす程度の能力

  日中は大人しいが夕刻になると活発化し、持ち合わせのお菓子を食べな
  がら人里を練り歩く、道行く人間に食べてるものと同じお菓子を配って
  まわるため、良い妖怪と思われる反面、変わり者と言われている。変な
  妖怪。本当に変。

  夕刻に会うことが出来ればお菓子をほおばりつつ「満足満足」とか言い
  ながら軽快なステップで踊っているのを見る事ができる。行儀悪い。


  ある日、いつも通りに人里を訪れるとぐったり倒れる人々、お菓子あげ
  ても反応を示さず困っていた所に現れる人間。

  これは助かった!、そう思い人間の元へ駆け寄った。

  するとどうだ、とんだとばっちりじゃないか。
 
  
 ○2面ボス 人類最大の夢
  二次 元華(にのつぎ もとか)
  ninotugi motoka
  
  種族:人間
  能力:平面になる程度の能力

  外の人間は平面になる事を強く望むらしい、彼女はそれをいとも容易く
  やってのける。だが見たまんま風に弱い。

  平面になれるという事はあらゆるものに貼り付くことができるという事
  、式の中に入り込み、縦横無尽のその中を動き回れたり、Tシャツに貼
  りついてど根性する事もできる。やはり風に弱い。水にも弱い。

  突風の日に変な物体が浮遊していたらほぼ確実に彼女。


  異変の事などお構いなしに薄い状態で浮遊中、突如人間に能力を無理や
  りかき消されて尻餅を付く、それに怒りを覚えた彼女は弾幕勝負を持ち
  かけた。


 ○3面ボス 灼熱博打魂
  三暗刻 単(さんあんこう ひとえ)
  sannankou hitoe

  種族:妖怪
  能力:運気を見る程度の能力
  
  鬼もビックリの豪腕を持つ竹をばっさばっさ切ったような性格の妖怪、
  勝つか負けるかの真剣勝負に全力を注ぐ。弾幕勝負も博打もドンと来い
  。

  ツキの回っている人間を見つけて博打をしかける、何かを賭けるなどは
  基本的には無く、ただ真剣勝負のスリルを味わいたいだけ。場合によっ
  ちゃイカサマだってやっちゃう。妖怪が相手でも然り。弾幕勝負を持ち
  かけてくる時もある。

  絡まれる方からすればなんとも迷惑な話である。


  「幽霊が大量に発生する」、その話は彼女の耳にも入っていた。怖いも
  の見たさに幽霊の出現する場所に訪れた彼女は、強烈な運気を放つ人間
  の気配を察知する。当初の目的である幽霊なぞそっちのけで、彼女はそ
  の人間の前に飛び出した。


 ○4面ボス 死相視る緋蜂
  四濡通 雀(しぬがよい すずめ)
  sinugayoi suzume

  種族:人形
  能力:死相を暗示する程度の能力

  死期の近い人間にその死相を暗示する自立して動く人形。

  多彩なからくりを搭載してるので、もしかすると死相の暗示というのは
  「出会ったら死ぬって事じゃね?」といった噂もある。真相はわかりま
  せん。というよりあまりわかりたくないです。


  彼女はあらゆる場所に現れ、それも死期の近い人間の前に現れる。

  謎の幽霊騒動により死相の無い人間が無数死に、無数また生き返る現象
  を目にした彼女は今回の騒動の黒幕を把握する。


 ○5面ボス 六道の道しるべ
  六道 廻(ろくどう めぐる)
  rokudou meguru

  種族:死神
  能力:六道へ導く程度の能力

  ベルを使い、彷徨える魂を六道輪廻へと送り出す死神。

  実際は生き過ぎた人間(仙人や天人)を地獄へと引き摺り下ろすのを本
  職としている。まさに死神。また、彼女の持つベルは死ぬ運命に無い霊
  を肉体へと戻す事も出来る。

  お宝探知ネズミと似たような話し方をする。きみはじつにばかだな。    


  異常な数の幽霊を目撃し、黄泉送り、肉体蘇生を繰り返す。できれば根
  源を絶とうと考えているのだが、目を離すとすぐにまた霊が増えるため
  一切動けないでいる。


 ○6面ボス 横難横死邪の亡霊
  五林中 日蓮(ごりんじゅう にちれん)
  gorinzyuu nitiren
  
  種族:亡霊
  能力:横難横死を操る程度の能力

  不慮の事故により命を落とした亡霊。

  自らをこのような姿に変えた相手を見つけ出し、復讐として相手も同じ
  目にあわせようと目論み、成仏が出来ないでいる。でもこの体も案外便
  利、なにせ飛べるし。

  自らの手を汚す事無く相手を痛い目にあわせたり殺すことができるが、
  特に害の無い者には何もしないので、遭遇したら悲鳴でも上げながら逃
  げるといいかもしれない。


  彼女を殺した犯人を捜すための人手(幽霊)とその幽霊の誤報によって
  結果大量の死人を出してしまった今回の黒幕。
  特に悪気があるわけではないが、無論死人がでてるので人間は邪魔しに
  やってくる。



  彼女がまだ人であった時、彼女には仲のよい妖怪がいた。

  人と遊ぶことは無く、その妖怪とばかり遊ぶようになり、里の人間から
  は蔑まれた。

  だが彼女はそれを一切気に留める事は無かった。
  彼女はその妖怪を親友と呼び合う程に仲が良く。
  周りがなんと言おうが、彼女にとってその妖怪と遊ぶ事の方が最高の楽
  しみだった。

  しかしそれが長く続く事は無かった。

  河で遊んでいる時の事、突如その妖怪は彼女を突き飛ばした。
  無論、冗談半分のつもりだった。妖怪は水浸しになってしまった彼女を
  見て笑うつもりだったのだろう。

  だが彼女は水に浮いたまま起き上がる事は無く、少し経つと水の中に沈
  んでいった。


  
  次に目が覚めると、彼女は幽霊の姿となっていた。

  何があったのか記憶も曖昧だったが、その中で彼女は唯一覚えているも
  のがある。

  ―「私は何者かに殺された」
  
  彼女は自らを殺した者の顔だけを覚えていた。そして誓ったのである。


  「私はこいつに復讐する」

  
  
  
=================================================
■2.エキストラストーリー
=================================================



  夕刻の神明神社
  異変が解決した今も相変わらずその敷地に参拝客の姿は見当たらない。
  いるのは神巫の知人のみだった。その後、五林中は犯人探しを諦め、人
  が謎の死を遂げるという事は無くなっていたのだが・・・

  神巫 「え?それってどういう事よ?」

  黒奈 「私だって俄かに信じがたいさ、だが今言った言葉の通りだ」

  神巫 「一度死んだ人間が自ら命を絶つ・・・どういう事かしら・・・
  ?」

  黒奈 「それも自殺志願とかじゃねえぜ、奴らは生き返るのを目的に死
  んでんだ」
  
  人里の人間が怪死する事は無くなったのだが「すがすがしい」「何度や
  っても新鮮」「やめられない」などと言って廻の力で生き返る事を目的
  に自ら自害する者が後を絶たないのだ。

  日蓮 「言っとくけど、こればかりは私は無関係よ?痛い目にはもう逢
  いたくないもの」

   廻 「いくら何でも自ら死を選ぶのはおかしいね、生に執着してこそ
   人間だ、仙人やら天人みたく、必死に生きようとする人間だっている
   のに、わざわざ自分から痛い目に会ってまで生き返ろうとも普通は思
   わないだろう。全く、本業に戻れるのはいつになるだろうね、こっち
   はただベル振ってるだけって訳でもないのに」

  神巫 「あんたはどうも無いの?」

  黒奈 「私は死ぬまで生き続けたいな」
  
  苦い顔をしながら話し込む4人、そこに陽気なステッポで歩み寄る影が
  あった。お菓子妖怪、一基 満足である。最初に会った時と比べると何
  やらずいぶんとテンションが高かった。

  満足 「まん♪まん♪満足!一本満足!フぇい!!」

  神巫 「いつぞやの満足妖怪じゃないの、何の用よ、こんな所まで、用
  が無いなら賽銭だけでも入れておきなさいよ」

  満足 「廻さーん、これ、どーぞー♪」

   廻 「私にかい?なんで?」

  満足 「夕方からのからのかんばりにー、だよ!」

  神巫 「いや、私は無視ですか、そうですか」

  満足 「ところで、何のお話してるのー?」

  黒奈 「何、お前には無縁だ。異変は解決したのに人里の奴らが死と蘇
  生に依存してやがんだよ」

  満足 「・・・!!」

  黒奈が発言した瞬間、満足の顔は一瞬険しくなり、そしてそそくさと神
  社から立ち去ってしまった。

  日蓮 「何かあったのかな」

  黒奈 「むう・・・あいつ、何か隠してやがるな」

   廻 「何故そうだと思う?」

  黒奈 「職業柄、心が揺れ動いたのがわかるんだよ、詐欺師ってのは相
  手の心を揺するような仕事だ。つーわけだ、神巫」

  神巫 「いわずもがな、よ」

  廻と日蓮には人里の人がまた死ぬ事が無いように見回りを依頼した、廻
  が言うにはあまり霊のままでいると肉体が腐敗して元に戻れなくなるら
  しい。彼女らが赴けば被害は最小限に抑えられるだろう。
  そして神巫と黒奈はそそくさと飛び立つ満足の後を追うことにした。
  「依存」への手がかりを探るために。

  

                                                                                                • -

◇敵キャラサイド

                                                                                                • -


 ○エキストラ中ボス 夕刻の極楽
  一基 満足(ひともと まんぞく)
  hitomoto manzoku

  種族:妖怪
  能力:心を満たす程度の能力

  依存の言葉を聞いて一目散に逃げ出した満足、やがて神巫達に追いつか
  れてしまい、仕方なく追い払おうとする。時は夕刻、彼女が最も活動を
  得意とする時間帯。彼女は本気の弾幕を展開する。

  
  彼女は「依存」させた人物を知っていた、人間達に悟られる前にそれを
  やめさせるために彼女は神社を飛び出した。

  その人物は知らなかった、その「依存」が大惨事を引き起こしていると
  。


 ○エキストラボス 止まらない依存の迷路
  八童 蝦煎(やわらべ かいり)
  yawarabe kairi

  種族:河童
  能力:依存させる程度の能力

  あらゆる物事に対しての「依存」を与える事ができる妖怪。

  
  一度ドでかい事をやらかしたいと思っており、自らの能力を使って人々
  を依存させてやろうと考えて決行、だがそれが先の異変と重なってしま
  い、人里の人間が死と生に依存してしまった。
  
  彼女はある理由で人里には近づかない。
  
  彼女には人里の様子が分からない。
  
  故に彼女はその惨状を知らない。


  そして彼女の知人は飛び出した、「異変」となる前に彼女を止めようと
  。


  
  やがて、自らの行っている事が大惨事を起こしている事を知り。
  蝦煎はすぐさま能力を解いた。
  
  根が悪い妖怪では無いので、彼女は、避けて通っていた人里にも赴き、
  人々に頭を下げて深く反省したらしい。

  日蓮はというと、復讐などという言葉は一切口に出さず、
  神巫達に叩きのめされたのが随分と効いたのか、蝦煎を快く許してしま
  った。

  今の人里は妖怪が蔑まれるあの頃とは違う。
  彼女はもう人里に怯える事は無いだろう。