破と除

うごメモ町から少し外れた森の中、ここからはうごメモ町の全貌を見る事が出来、非常に見晴らしが良い。
その森に奴らはいた、タバコを蒸す中年と、違反の思念体である。
違反の思念体は度々自らがうごメモ町に構える図書館から抜け出し、中年のもとへ行く。中年は定まった住居を持たない。
だが中年を「親友」と呼ぶ違反の思念体は中年の居場所がどこであろうが知っているように当ててしまうのだ。


中年は問うた。
―この町はいつも進化を遂げる、だがそれは本当に進化なのかねェ―

違反の思念体はそれに対してしばらくの間黙秘を続け、その後、重い口を開き言葉を返す。
―退化もまた一つの進化だ。本当の退化は、この町の動きが止まった時―

違反の思念体は遠くを見据えてそう言った。
中年には、今の違反の思念体に何が見えているのかわからなかった。