動手帳思念大戦(冷戦) Ps-2 cp-0.5 ムカデ的なハイテクでネクストなメイド

思念の数だけ惨劇がある。思念の数だけ悲劇がある。


Ps-2 cp-0.5 ムカデ的なハイテクでネクストなメイド




「・・・・・」


「もう一度」


「・・・・・」


「ダメだ、もう一度」


「・・・・・」
「お前やる気あるのか?」
「ねえよ!!なんで俺がこんなんに付き合わされねえといけねえんだ!!」
我慢の思念を連れ帰り、俺たちは図書館へと帰還した。ヤグレムと捜索組がすでに戻っており。書物組は<嘘の思念体・ヲトギ>を。ガルテスは収穫無し、影響下だったらしいが柱が見つからなかったそうだ、まあガルテスは人間だ、性質を感じ取る事ができないから無理もない。その代わりなのか奴は違うものを連れて来た。俺やガルテスと同じ<悪サイド>の一人<ヴィグレイマ・ダークネス>とその従者、<サルヴィナ>だった。外の異変に気が付き、従者の計らいで避難中だった所でガルテスと合流したらしい、世界中この状況なのにどこに避難するつもりだったのだろう。まあ知らないだろうから仕方ないのだが。そのまま一日が経過し、そして俺が今やらされている事というのが・・・
「ガルテスよ、昨日からイハンは何をやっておるのだ」
「俺に聞くかァ?まあなんでも完全な空白の星を作り出す特訓だそうだ、俺にもわかんねェよ」
「貴様等話してないで俺を救出しろ」
例によって俺は<完全な無想星>を作り出す特訓をヤグレムに押し付けられていた。前回妙に協力的だと思ったら自分はゼロスターで出てくる星を消すだけで<協力>などという要素は皆無だった、所詮ヤグレム、その程度だとは思っていた。無いのに在る物故に、完全という表現を使うのはおかしな話だとヤグレムは言うのだが俺には理解が出来ない。全く。そして平和の思念は新品同然に調整された傘に不備がないか確認している、その綺麗になった傘に泥を投げつけてやりたい、ついでに持ち主にも投げつけてやりたい。一方嘘の思念はグリモアと信仰心に対してホラを吹いている。自慢げにありもしない事を語らうヲトギ、笑う以外の反応をしない信仰心、口をあけて座り込み、黙々と聞いているグリモア。クロニクルは目立ってない。
にぎやかだ。
いつもは静かな時間の流れるこの図書館、にぎやかすぎて不気味だ、半数以上が足が無い種族なのでなおさら不気味だ。信仰心には足があった、驚愕。
そしてそのにぎやかさを掻き消してしまうくらい扉を開く音が響きわたった、そろそろ扉の金具の交換時期だろう、この前ガルテスが乱暴に開けたせいでその音のヒドさはとてつもなく過酷さを増していた。扉が図書館に立ち入る者を殺す、音で。だが入ってきた者はその音に一切蝕まれる事なく、むしろ威風堂々とした感じだった。
扉の先にいたのは左目の下に金具がついている赤色のネクタイをしたメイドとそれより頭一個分背の低いお団子カスタムしたメイド。クソッ、何故メイドなんだ、お呼びでないぞ、メイドカフェじゃないんだぞ此処は。
「まあ珍しい客が多いことだ、メイドを雇うつもりは無いぞ」
「セルラさん?」
「おや、サルヴィナさん。あなたもいらしていたのですね」
「何の用だ、メイドを雇うつもりは無いぞ」
「それはもう聞きました。今回、何やら世界的に人々の様子がおかしいので、<どうせ> <また> <あなたたちが> 絡んでるのではないかと思い尋ねたのですが、どうしたのですかこれは、いつから図書館というのは心霊スポットになったのです?」
「さらりと中間あたりの発言ひでえなてめえ」
「我が主の悪口は例えセルラさんでも許しません」
「何いってんだおめえらよぉ、俺達悪役には今のはほめ言葉だぜェ?」
「あ、それもそうだ、どうも最近主人公やってるせいで感覚が」
「メタいぞ」
「悪口じゃないならどうでもいいです」
「待つんじゃサルヴィナその発想はおかしい」
「ねえセルラさんセルラさん」
「どうかしましたか?<リザ>さん」
「あいつら食べてもよろしいですかといいますか即刻食したいです」
「自分の腕食べておきなさい」
「どろーん」
謎の茶番が展開された瞬間だった。
世界的に発生したこの異変、まあまず疑われるのは俺達だろう。うごメモで発生したどでかい異変には必ず俺達が絡んでいる、と言っても過言ではないレベルだからだ。でもいざ被害者の側になって疑われるとなんだか切ない、冤罪で被告人呼ばわりされる奴というのはこういう気持ちなのだろうか。一応状況を説明したらなんとか誤解も解け、和解した。だが悪役であるためにその後も向けられる視線は冷たい。すごくこの場に居座りにくい、俺の家なのに。
ネクタイメイドは<セルラ=グランギニョル>と名乗り、<オートマトン>であるがために影響を一切受けていない。そしてお団子メイドは<リザ・ネクストリア>と名乗り、<とっくにポックリしている>ために全く影響下に無かった。最近のメイドはハイテクでネクストある。そんなものである。しかし何故メイド集結した。【メイド・オブ・トリオ】とかやるの?ねえ、ねえったら。などと考えていたらヤグレムが話しかけてきた。
「今日は終了だ、まるで何か企んでるようなドロドロした無想星(黒)を量産しまくるようでは特訓の意味がない」
「終わりか、よし、コレデヨイ」
「おお、開放されたかァ、しかし思念体ってこんなにいるもんだったんだなァ・・・せいぜいお前だけかと思ったんだがよォ」
「正直言うと嘘の思念とか信仰心の思念とか初見だぞ、俺でも把握しきれてねえんだ、もう何体いるのかわかったものじゃねえ」
「わからんのう、思念体というのは・・・」
「まあそんなもんだ、俺以外の思念体ですら思念体ってのがどういうルーツで生まれたのか全くしらねえ、何でも知ってそうなヤグレムでもな」
「そうなのかァ?ヤグなんとかさんよォ」
「答える義務は無い」
「ところで・・・・」
そこに平和の思念が割って出た、傘の整備は万全のようである。ド畜生。
「ここまで人手があるならば柱の捜索が楽になるのではないかと」
話が逸れすぎて忘れていた、確かにそうである、此処まで集まっているのであれば探す事など容易、おのおのに分散させて捜索させれば効率だっていいだろう。流石平和の思念体、こいつマジで早めに死んでくれないかな。
「それなら・・・ん?」
誰かが左手で俺の袖を引っ張った、紅色に染まっていてトガっている左手はグリモア以外にいない。俺は後ろを振り返ると、おいなんてことだ、グリモアとクロニクルがメイド服の姿になってるではないか。「かわいい?ねえかわいい?」とグリモアが質問する、俺はテキトーに「ああかわいいです」と無機質に答えるとグリモアは飛び跳ねて喜び、本棚に顔を打ち付けて倒れこみ、ゴロゴロと転がっていた。なにこれ、メイド病?そんな病気あったっけ?
「お前ら、本の姿に戻ってみろ」
そういうと2冊の本は皮で覆われていて四隅を金具で止められた高級な材質の本の姿・・・に戻ったのはいいが、その上に変なカバーが被さっていた。




【メイド大全】




なんなんだこの表紙は、おそらく二階から持ち出して来たものだろう、図書館の天井は真ん中が四角く吹き抜けになっており、二階に通じている、二階には本が勝手に増えていくため俺でも把握していない本が転がり込んでくるのだ。ちなみに二階に行くには階段もハシゴも無いために空を飛ぶしかない。そしてクロニクルには【メイド大全2】という表紙が被さっている、シリーズモノだったのか、メイド大全。
あとグリモアとクロニクルは表紙が止め具で固定されているので普通はあの服以外は変える事ができない、だがその上から違う本の表紙を被せることで違う服に着替える事ができるのだ。いや、だからってなんで今まさにこのタイミングでメイド服チョイスした。
「メイドか・・・・・よし」
決断した。俺は手を交差するように合わせ、その状態でソフトに耳元へ持って行く。
そして



軽く手を二回叩いた。




「「「「「お呼びでしょうか、ご主人様」」」」」
「ハァ!?」「え!?」「なんじゃと!?」「・・・・・」
「良くぞ集まってくれたメイド軍団達、君達を呼び出したのは他でもない、君達には既に事情を把握している者、先の説明で理解した者の二種がいるとして私の中では理解している。君達が従者として全うして欲しい事を述べさせていただく、一つは思念思想の杭柱の発見、そして二つ目だが、思念思想の杭柱の破壊、及びソレに封じられていた思念体を確保し、このイハン=メモラー大図書館へと連れ帰る事、今回は思念体同様に性質の影響下に無い者がいるため非常に心強いことこの上ないが、これに関しては一切無理強いはしないため、発見したら報告のために帰還するも自由だ。ただし最悪発見できない場合でも必ず夕刻には帰還するようにしたまえ。私の述べた事柄が理解出来たのならば、直ちに行動するように。以上。」
「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」
そして彼女らは一糸乱れぬ隊列で上品に外に出て行った。扉の音がうるさいのが誰も気にならなかった。誰も気にならなかった。誰 も 。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「おい、イハンよォ・・・」
「・・・なんだ・・・」
「なんだァ?アレ・・・」
「サルヴィナが他の者の言う事を聞くとは・・・貴様、何をしおった・・・?」
「恐怖幻覚・・・とは違いますよね・・・?アレは服従させるような技じゃないですし・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「いいかお前ら・・・あれはな・・・・・」
全員が息を飲む。いや、ヤグレムは飲んでない。



「や っ て み た か っ た」




「・・・それだけか?」
「それだけ」
「なにか術とかは」
「使ってない」
「じゃあ何故・・・」
「「「どうしてああなった!!?」」」
全員が声を揃えて俺に問うた。俺は冷静になってこう答える。
「存じ得ません。マジで存じ得ません」
ところがコレ本当だった、俺はなんとなくやってみたくなり、例の手を叩く動作を行った。本当に突発的に手を叩いただけだ、するとこのザマである(例のセリフは全てノリである)。どうしてこうなったのか俺も問いたい。切実に。
「・・・・・まあ、なんだ、メイド軍団は行ったんだ、俺等も柱探しに行こうぜ・・・」
「おう・・・」「はい・・・」「うむ・・・・・」
「ヤグレム、お前はどうする」
「私か、私はまだ調べるものがある、柱はお前達だけで行け」
「ああそうかい、そいじゃ行ってくるぜ・・・」
「イハン、お前キャラ変わってるぜェ・・・・?」
「言うな・・・もう何も言うな・・・」
正直あのまさに文字通りの<完全無欠>を目の前にして、俺は少々涙目になっていた。なお、我慢、信仰心、嘘の思念には留守番を要請した、嘘の思念は特に「[断るZE]」と快く引き受けてくれた。俺達の朝は、なんとも言いがたい空気から始まったのである。








===============
「いやー、たのしかったねー」
「うん、案外悪くなかった感じはする」
「主君でもなんでもない奴にご主人などど言うのは随分と気の引ける話ですね所でセルラさんふともも食べさせてくださいというか即刻食わせてください」
「若干鉄の味がすると思うので自分のすい臓でもかじってください」
「ああ、後でどう説明すればよいのでしょうか・・・」
「サルヴィナさん、あなた忠誠心完璧なのに、どうしていつもどこか抜けているのですか?」
「もうこの際サルヴィナさんでいいのでその体中から生えるスルメを食べさせていただけませんかお願いします」
「<姫百足>です」

女子会は華やかであった、全員メイド服なのもあってなおさらの話である。
===============
「あ、そういえば」
「どうかしましたか?イハンさん」
グリモアの事なんだが」
「あのカラフルな小娘かァ?あいつがどうかしたのか」
「いや、些細な事だ、あいつも確かあの中(メイド軍団)にいたよな」
「確かにおったぞ、それがどうかしたのか」
「あいつの言葉は大体ひらがななんだが。あいつ、<漢字で喋ってた>」
「あ」
「あァ」
「むぅ」

やはりなんとも言いがたい空気で始まる他無かった。遠くで信仰心の笑い声が聞こえた。

―――――to be continued・・・・・・・・・・