動手帳思念大戦Ps-2 cp-0 我慢と破壊衝動の因果

人の思念思想によって激化したそれはやがて永き惨劇の序章である。

Ps-2 cp-0 我慢と破壊衝動の因果


突如として図書館に襲来し、俺達の前に現れた思念体共。無の思念体、ヤグレムが話す事によればそいつは<黒絶星の思念体・アズゥ=ブラックフェザー>だという。奴の目的がわからずして俺は奴の策略にまんまとハマり、見事なまでに世界は不安定でよくわからん状況下にされてしまった。空は俺が奴に騙された際に明け渡してしまった違反の力で真紅の色に染め上げられ、各地の人々は思念体を封じた柱の出す性質によって感情が固定され不安定となった。奴がこのようなことをしていったい何が目的なのかはわからない。とにかく柱から思念体をぶっこ抜けばその地域の人間は元に戻る、この状態の世界に危機感を感じた俺はその確立された情報を元として(正直めんどくさくて仕方ないが)動く事となった。アズゥの目的とはなんなのか、何故ヤグレムはここまで情報を持ち合わせているのか、謎の星性質、<無想星>を行使できる俺は何者なのか。それはまだわからぬまま波乱のフェイズ2が今始まる事となる。


「で、なんでやっぱりお前と同行しねえといけねえんだ」
「なんでって、ヤグレムさんは他の事情で行ってしまいましたし、違反の影響の無い方々は皆それぞれ柱を探しに行ってしまいましたよ」
「それはそれだ、なんで同行動なんだと言っている、別行動を取る事だってできるだろう?」
「いや、それはアレですよ、私あんな太い柱破壊できませんから」
「傘あるだろお前・・・それでどうにかなるんじゃねえのか・・・」
「傘は今調整と修理の状態です、彼の思念体の破壊光線は恐ろしい威力でしたからね」
「傘無かったらお前ただの役立たずじゃねえか・・・おとなしく図書館でじっとしてろよ・・・足手まといだし」
皮肉交じりに俺が言うと奴は聞く耳立てずに先へニコニコしながら進んでいった、ウザイとキモいの相乗効果。
俺達は現在うごメモ町を抜けた先からわりと近い地域を目指していた、ヤグレムが言うには今や世界中があの柱の影響下に置かれているのだそうだ、ならば虱潰しにその辺回るだけでも見つかるだろうと思い、俺はうごメモ町を抜けた先に近辺をテキトーに見回る事にした。粗大ゴミ付きで。
「しかし・・・」
粗大ゴミは言った。
「まるで人がいませんね・・・」
「ここはもともと人の多い場所じゃねえ、うごメモ町を少し越えたハズレだからな、大体の人間はうごメモ町にいるばかりで此処には来ない、全くってワケでもないがな」
「随分と詳しいですね」
「伊達に住民やってねえんだよ」
人はいない、てか此処には元々人は来ない、道が整備されていたりと人の技術の爪跡もあるのだが、特にこの道を使用するにもこの道の行き先に何があるという訳でもない、うごメモ町に行くにも大通りを通ればいい訳でこの道は一切意味を成していないのだ。だが思念体である俺達にはわかっていた、この周辺に思念体の気配がするのだ、おそらく柱に封印された思念体だろう(あと柱の正式名称は「思念思想の杭柱(しねんしそうのこうちゅう)」らしい)、しかし人もいないしあまりに気配が薄いためにソレが何の性質を持った気配なのかはさっぱりだ、この区域に封印された思念体に少し哀れみを覚えた。そして・・・もう一つ・・・もう一つ思念体の気配があるのだ・・・、それもかなり近い距離にあり、その性質もはっきりと認識できる・・・そう・・・その性質は・・・!!
「キャハハハハ!!ちょっとお兄さん達!?」
異様に甲高い笑い声が突如響き渡る、声は、足元から聞こえた。足無いけど。
「この性質・・・信仰心の思念体でしょうか・・・?」
「声はあっても姿は見えず、何処だ?封印されてねえならとっとと出てきやがれ」
「キャハハハハ!いや無理よそれは、今私あなた達の足元にいるのよ?あなた達足無いけど」
「何!?」「え!?」
足元を見るとサラッサラの少し黒みのかかった灰色の微粒子が散らばっていた、足無いけど。その微粒子を掻き集めてすくい上げると今度は俺の手元から声がした。手はある。
「まいっちゃったねぇ、まさかこんな姿になっちゃうなんてさ、キャハハハハ!!」
「何がどうなってそうなったんだ、灰色はヤグレムだけで結構なんだが、むしろアレすらカンベンして欲しい」
「いやあね、あたし肉体をダイヤモンドに変質できるんだけどね、どうもこの辺一帯の圧力が色々不安定な状況にあるみたいでさ、変質の際に変な圧力かかったのかただの炭素になっちゃったのよ!キャハハハハげほげほ」
奴が咳き込むと奴の肉体(とは言い難い微粒子)が宙を舞い、奴は「キャハハハハ」と笑っている、肉体が分散してるのに楽しそうで暢気な奴だ。なんで奴はこんな人気のない場所でそんな能力を行使したのだろう。疑問は募るばかりだが、聞くのは面倒なのでよしておく事にした。そいつは<ビリーヴ=アダマス>と名乗り、性質は信仰心だ。俺はそいつがあまりにうるさいので放り投げて分散させようと考えたが、分散された状態で例の笑い声をあげられてもトラウマ量産しかしないと考えてその辺にまるでご都合主義のように落ちてた小瓶を拾い上げ、そこに奴を詰めた。奴は相変わらず笑っている。軽くトラウマものの笑い声だ。だが奴の発言で、封印されている思念体がどの性質か理解を得ることができた。
「おい信仰心」
「何ー?」
「お前確か<圧力>って言ったな?」
「いったよ?キャハハハハ」
「平和の思念」
「ええ、わかってます、我慢の思念体、ルチア=サプレスですね」
「これであとは奴の性質を辿ればいい、が・・・」
「驚きですね・・・性質だけでなく、能力の片鱗すら放散させるとは・・・」
「<思念思想の杭柱>か・・・なんなのかわからんものに悩まされるとすこぶる気分が悪い」
「全くですね・・・」
「前言撤回だ、お前と同じは断じて嫌だ」
「ひどい」
思念思想の杭柱・・・思念体を封殺し、その思念体を媒体として性質をばら撒く正体不明の物体、それ自体この騒動で初めて聞いたものであり、それが何なのかわからないのだが、さらにその柱に掘り込まれている点と線で構成された文字、ワケが分からない、読めない。今日という日に色々ありすぎてもう頭の中がパニックしている。などと考え事をしていたら木に激突した、信仰心に笑われた、やっぱ笑い声が怖い。
俺と粗大ゴミと灰はさらに先に進む、この道は本当に何も無い。ただひたすら性質が強くなる方向を辿って進むだけだった。
「ところで信仰心」
「なあに?」
「ダイヤモンドじゃなかろうがその状態は炭素にかわらねえだろ?何でもどらねえんだ?」
「いやーあのねー、私も何度か試したんだけどもね?粒子が細かすぎて構築できないのよ、集めて固めようとしても霧散しちゃうのよ、キャハハハハハ」
「つまり安定した圧力さえあれば元に戻れるという事ですね」
「キャハハハハ、そうなるのかな?」
「いや、自分の事だろ」
灰から声が聞こえてくるのと奴が自分の声で時々ビンの中で体(灰)が舞い上がってるのでなんか気色悪い。率直に<こいつは何なんだ>。
「おおう、おおうキャハハハおおう」
「何を言っている」
「いやね、急にこのへんの圧力が強くなってるのよ、キャハハハ」
「という事は・・・」
「どうやらそういうことらしい」
俺達が見上げた先には前回と同じ柱が、<思念思想の杭柱>がそこにあった。杭柱はものすごくぶっとく、地面にがっつり突き刺さっている。そして青白く発光する例の意味不明の文字があった。やはり読めない。まあいい、読めないのはさほど問題でもない、とっととぶっ壊して中の人引き連れて帰るだけだ。
「平和の思念、ビン持って下がってろ」
「はい」
俺は手に<違反>を収束した、収束したエネルギーは赤黒い塊となって肥大化する。実際全然手に力を込めていない、軽く「破壊弾使ってみよっかなー」程度に思っているだけだ。だが前回ヤグレムとの戦闘で分かったのが世界中に充満した違反も勝手に力の糧となっていることだ。そのせいで俺は自分の破壊光線の反動で吹き飛んだ。それもあってか、今は力の加減に慣れてきている。
「おい、何やってんだ?テメェら」
その時上空から声が聞こえたので俺は収束をやめ、その場から退くようにステップした、足無いけど。
すると上空から俺のいた場所に猛スピードで突っ込んでくる拳、その拳は地面を深く砕き、そこからさらに時間差で一段、二段、と砕けていく、そして瞬く間に<そこ>をクレーターのような地形に変えて砂埃を巻き上げた、杭柱はその範囲外で佇んでいる。信仰心は笑っている。
「おや、またあなたですか?」
「アズゥの野郎も思念体の使いが荒い奴だぜ全くよ、つうワケだ、「お前らの邪魔して来い」って言われたもんでな、邪魔させてもらう」
「アズゥんトコの野郎か、どいつもこいつも邪魔ばっかだな」
「イハンさん、彼は<破壊衝動の思念体・ヴァーサク>さんです、性質の本質は・・・まあその名の通りです」
「おいてめえ、自己紹介した覚えはねえぞ」
「いえ?あなたが自分で<呟いた>んですよ?」
「ああ、そういうことか」
意味の分かった俺は暗黒微笑(笑)を浮かべた。
「ワケのわからねえ奴らだな、ぶっ壊すぞてめえら」
「じゃあその後ろにあるそれ破壊してくれよ、そのほうが楽だからな」
「しかし・・・彼はそこまで強い印象がありませんでしたが・・・図書館での戦闘でも殺気は微弱、ダメージはほぼ皆無、そのあたりは演技には見えませんでしたよ。本棚に触れた瞬間に粉砕はしましたけど」
などど奴を小ばかにしていたら奴の学ランのボタンが一個はじけとんだ。その瞬間に奴の殺気は急激に増大し俺達は一瞬氷つく。信仰心は笑っている。
「覚悟しろよテメェら」
「何か嫌な予感がしないでもない」
「毎回そうですけどあなたのそれはもう予感じゃないです」
そして奴は霊体を拳にまとわせ、まるで燃え盛る業炎の如き拳を振るって来た、幸い大振りだったために簡単に回避する事ができたものの、奴が空を切った拳は地面に直撃し、地面はえぐれるように崩壊してまた一つ大きなクレーターを作り上げた。整備されていた地面は原型を留めておらず、人間の手が入る前の姿があらわになっている。命中してたらどうなってただろう。
奴はひとつ舌打ちするとまたこちらに向かってきた、パワータイプであろうが思念体は浮遊しているためにとにかく機動性が高い(個体差はある)。俺はまたすかさず回避する、あたったらやばい。
「おい!平和の思念!!」
「はい!?」
「あまりお前に頼むのは気が進まんが仕方ない!此処はお前との連携を取ることにした!」
「どうすればいいんですか!?」

「信仰心と!」


「<こいつ>を!!」


「持って!!!」


「俺の!!!!」


「視界から!!!!!」


「失せろ!!!!!!」


これはひどい!!!」
「だってお前足手まといだから!!傘無いとただのゴミだから!!」
「もっとひどい!!!!」
そういって奴は信仰心入りのビンと<アレ>を持って去って行った、ざまあみそづけ!!
一方信仰心は笑ってた。
「逃がしたのか?」
「いない方が楽だからな、アレ」
「こいつはひでえ」
「ほざけ、俺は腐っても違反の思念だ、俺以外の奴がどう思おうがどうなろうが俺には一切関係ないことなんだよ、これでいちいち邪魔者気にする必要ねえワケだな」
「んだとテメエ・・・!!」
「さっき俺は<嫌な予感>がすると言ったな、ありゃ嘘だ。ちょっと貴様の力が強くなったところで今世界中が俺のホームグラウンドだ。どっかのだれかのおかげでな!!」
といい終わったところで奴の拳が俺の顔面を深く突いた。街路樹に3本激突してようやく止まったが障害物がなかったら超飛んでた。ホームグラウンドになろうが防御力はそのまんまだ、めちゃくちゃ痛い。
「おい、こういう台詞というのは最後まで聞いてやるのが礼儀だぞコラ」
「いや最後まで言い切るの確認してから殴ったから問題ねえだろが、あと違反が礼儀とか言うな」
「ぬかせでこっぱちが」
「誰がデコだこの唐辛子」
「黙れ殺すぞカス」
「うっせえ潰すぞバカ」
奴はまた拳を掲げ、すぐさま振り下ろしてきた。俺はそれをしのぐ早さで動きネガティブウォールで防御する。防御力は変動しない、だが<強度>は格段に上がっていた。
「ッ!!?」
「ホームグラウンドっつったろ!小程度強くなった所で俺にたてついてんじゃねェよカス!!」
奴はまだ本気ではない、いや、<本気を出せない>。破壊衝動といったところでまだ破壊の程度はさほどのものではないため強化されたネガティブウォールが若干押される程度で十分凌げる程のものだった。というか望んだ物よりとんでもなくデカい壁が出てきて自分も驚愕。モノリス召喚した覚えはない。
「ってめえ!!」
「<ベクトルアウト>」
俺の掌で完全に止められる拳。さっきまでの強気はどこへやら、すっかり意気消沈しどことなく必死な感じの目をしている。少し余裕をかましたら引っ込めた拳をすぐさま突き出してきてまた顔面を殴られる。今度は地面を500m程地面をえぐるように滑った(うつぶせ)、鼻血がどぼどぼでてくる、鼻血以外のものもだらだら出てくる、クソ痛い。死ぬほど痛い。一撃が重い。たった二発だがよもや瀕死である。
「調子こいてんじゃねえよ」
「ぶふぐぇ・・・だがだぁ(だがな)・・・某成仏出でる画だだぁ(もう勝負ついてるからな)・・・!!」
「あ?寝言いってんじゃねえぞ!!」
奴はまた俺に向けて拳を向けてきた、が、その時。
「なんだ・・・!?」
「いだろが(言ったろうが)・・・ぼうじょうぶづいでるっでぼろろろろろろr!!(もう勝負ついてるってよお!!)」
奴が振り返ったその先には砕け散った杭柱の破片が散乱していた。そこにいたのは、<我慢の思念・ルチア=サプレス>と<信仰心の思念(灰)とついでに平和の思念>だった。いちいちあれだけどやっぱり信仰心は笑っている。
「てめえ!逃げたんじゃねえのか!?」
「ええ、逃げさせていただきましたよ?あなた方の闘争からは、ですけどね」
「あー、なんか出すもの出してスッキリだ!あいにく、奴には信仰心ともう一個渡したものがあんだよ」
「なんだと?」
「<破壊弾>だよ、かなり出力は抑えてあるがな、だがそこにあったチンケな柱を壊すにはちょうどいいぐらいだ」
「渡された時は焦りましたけどね、なんとなく意図は読めたので私も一芝居うってでたんです」
「まあ手違いかなんかで破壊弾落として平和の思念が炸裂してくれたらそれはそれでよかったんだがな」
「てめえらァ!!」
でこっぱちは平和の思念めがけて突っ込んでいった、なんかマズくないか。あいつロクに戦えないぞ。
「いまいち状況の把握に苦しみますが、ヴィヤズ・・さん?でしたっけ?彼の情報を一部分でいいので簡潔に教えていただけます?」
「はい、彼は破壊衝動の思念体・名はヴァ−サクさんです」
「破壊衝動・・・そう、ありがとう」
破壊衝動と聞いた瞬間表情が濁ったが、かまわずに我慢の思念は軽く息を吸いこう唱えた。


「・・・圧力方向・・・対象・破壊衝動の思念を・・・」


「下へ!!!」


するとでこっぱちは直角に角度を変え、自らの作ったクレーターの中に沈んだ。
「ぐふッ!!?」
「退きなさい、破壊衝動。もし私の意志に背くのであればあなたを此処でクレーターの一部にします」
「っち・・・・!」
我慢の思念はそういうと、でこっぱちは空の彼方へと消えていった。


「圧力方向・・・信仰心の思念を中央へ・・・・・」
すると信仰心(灰)は空中で一塊となり、能力でみるみる元の姿へと戻る。
「キャハハハハ!!げほぉ」
奴はゲップのような音を発し黒い煙を吐いた。汚い、煙い。
「にしても良くやってくれたな、お前にしては上出来だ、死ね。ブッ死ね」
「イハンさんとは心が読めずとも大丈夫そうですね」
「いやそれはいいから早く死ね」



「破壊衝動・・・・・」
我慢の思念体はどこか悲しげな目をしていた。気がした。



―――――to be continued