動手帳思念大戦 Ps-1 cp-1 ゼロスター

思念体のルーツは思念体自体も知らない。



Ps-1 cp-1 ゼロスター

俺は平和の思念に引っ張られながら微かに感じる無の感情を辿り、無の思念体、<ヤグレム・リソプディ>を探していた、というかこいつがここまで力技で俺を連れてくるってのがあまりに珍しい。俺が黒マントの策略にまんまとはめられて違反の力を世界中にばら撒かれた事で落ち着かないのだろうか、まあなんといっても結局こいつは俺の性質と正反対、完全対立し相容れぬ存在だ、その力が浴びる量は微量といえど世界中にばら撒かれたとなればこいつが落ち着かないのも無理は無いだろう、違反が撒き散らされるという事は平和から幾分遠ざかるという事だ。濃度こそ薄いものだが、下手すれば<平和>が消えうせる事も考えられる。焦りは理解できる、できるのだが、なんで俺を引っ張ってまで連れて行くんだ。あと正直ざまあみやがれ。そういや平和の思念は笑顔で顔に書いてあるかのように心の中で思った事を言い当てるらしい、心を読まれたと誰かが言っていたのを覚えてる。
「おい平和の思念」
「なんでしょう」
「お前心が読めるらしいな」
「読めませんよ、聞こえるだけです」
「それ読んでるよな」
「似て似つかぬものです」
「どっちでもいい、じゃあ俺が思った事はわかるか?」
「不思議とイハンさんの思考は聞こえてきませんね」
「何でだ?」
「単純・・・だからではないですか?」
「あっさり言うなよバカ」
単純・・・か、平和の思念に言われると何かしら腹がたつのだが、その言葉はさっきあのマントに言われたばかりで余計にムカついた。何が「流石は違反の思念、真に単純な思考だな」だ、いや確かに嫌がる事して喜ぶタチだが俺は周りが思っているほど単純な奴ではない、大体俺は・・・・・・、とここまで出てまたマントに騙された事を思い出しやるせない気分になった、あと何度かはこれが繰り返されるような気がする。くどいくらいだが俺の嫌な予感ははずれなし、小さい事も大きい事もだ。というか
「そろそろ引っ張るのやめてくれないか」
「ダメです、逃げますから」
「なんで俺が付き合う必要がある、増してやお前と」
「万が一の事態というものがあっては私一人だと心ともないですからね」
「あら、信頼ですか、わあうれしい。地面にのた打ち回って死ね」
とりあえず奴の引っ張る手を振り払った、もう逃げるのもバカらしくなり、俺は奴に同行することにした。死ね死ねいいながらついていくことにした。奴はニコニコしていた。キモい。しかし引っ張られながらもかなりの距離を進んだはずだが、おかしい、普段のうごメモ町ならばもう少しにぎわってるはずなのだが、一切の音がない。妙に静かだった。
「イハンさん・・・?」
「どうした」
「あれ、人じゃないですか?」
「ああ、人だな」
「何か、おかしいですよね?」
「ああ、おかしいな」
「あの人から感じるこの気配・・・」
「どう考えてもヤグレムのモノだな」
俺達はついに頭がどうかしたんじゃないかと思った、アレはどう考えてもうごメモ町の住民だ、しかしその気配はまるでヤグレムと瓜二つだった、俺達は近寄って確認してみたが、やはりただの人間だ、しかしその人間は無表情で一切の感情をあらわにしなかった。よくみてみれば周りの人間も全く同じ状態だった、普段騒がしい程のうごメモ町の住民が一切しゃべる事も無くただ表情を変えることもなしに突っ立っていた。一体どういうことだ、なんなんだこいつらは、量産型ヤグレムなのか。俺等はまた場所を変え、道行く先で出会う人間の状態を伺った。やはりどれも無表情で、それぞれからヤグレムと同じ気配を感じるのだ。
「これは・・・・どういうことでしょうか・・・・」
「町中ごぞってナイーブとか」
「無いでしょう、それは」
「冗談だってことぐらいわかれ」
「相変わらずですね、イハンさんは」
「どういう意味だ」
「そういう意味です」
「・・・・・、まあ、とにかくだ、ただ町の連中が無表情になるだけならどうもしない、問題はその人間達からヤグレムの性質を感じる事にある。おそらく図書館付近で感じたのは人間共の気配だろう。何故うごメモ町全体の人間がこの状態に陥り、その全員がヤグレムと同じ性質を持っているのか。」
「ヤグレムさんの性質が漏れている?」
「と、考えるのが妥当だろうな、もしくは直接性質を与えているのかもしれん。これも違反が充満しているのと関係あるのか、それともヤグレムが自身でやっているのか」
「後者は考えられませんね、ヤグレムさんがそのような行動をとるとは思えない」
「奴が望んでこんなアクティブなことしないな、なんにも興味を示さないような奴だ」
「じゃあ・・・」
「マント野郎がなんかしたんだろう、それ以外で思い当てはまるものがない」
「しかしヤグレムさんですよ?やられたり素直に従ったりはしないと思いますが・・・」
「それがわからんから探しているのではないのか、焦るな、正確な分析ができなくなるぞ」
「あまりあなたにいわれたくありませんねそれは・・・」
「俺も今のお前にソレを言われる筋合いは無い、その証拠に俺は苛立っていない。何故か?お前が人の事言える状態じゃないからだ」
「・・・・・」
何かこいつの様子がおかしい、なんというか挙動不審だ、さっきまでの落ち着いてニコニコしてキモい井出達がまるでない。やはり違反まみれの世界がこいつを狂わせているのだろうか、真相は定かではないにしてもとりあえず口喧嘩で初めてこいつに勝ったので真に良い気分だ。まあ兎にも角にもまずはヤグレムを見つけることが最優先だ、あいつは俺達の知らないものも知っている(ハズ)、見つけてたっぷり絞ってやる事にしよう。しかし、しかしだ、気がついたらさっきまで引っ張られていた俺が主導権を握っているじゃねえか、まあ環境が俺向きの状態なのだからわからなくもないがなにか落ち着かない、<いつもと違う>と染み出る違和感によってなにか心にスッカスカの空間が開いたような気分になる。普段ならそれを本なり悪戯なりで解消してきたのだが状況が状況だ、そんな余裕もないし悪戯しようにもみんな灰色だ、つまらん、実につまらん。そんなこんなしているうちに広いところに出た、<強い気配>を感じるあたりヤグレムも近いのだろう、平和の思念は全く喋らない、ざまあみやがれ、俺に口答えするからこうなるんだ、もう一度心の中でざまあみやがれと呟くと前方から見慣れた顔が見えてきた。
「あれ!?イハンさんじゃないですか!?」
それは俺の図書館の超常連、全ての客の模範である格闘娘、セラフィナだった。
「セラフィナか・・・・・ん?」
「おや、セラフィナさん、こんにちは・・・あれ?」
喋る、喋ってる、それどころか笑顔だ、久々に表情を見たせいなのか非常にその笑顔は眩しい。なぜだ、何故灰色になってないのだ。
「なんだか空が真っ赤になって・・・周りの人がおかしいんですけど・・・何かあったのですか?」
「それはもう非常にいろいろあって腹がたっておりますもうみんな死んでしまえばよろしいのに」
「・・・そういえば他の方々は?」
「一部の人は私と同じく普通に元気ですが・・・その他は・・・」
「どういうことでしょうか・・・全く影響の無い人たちがいるなんて・・・」
「むう・・・・・」
「イハンさん?」
「いや、なんでもない、少し考え事だ」
「?」
「おい、セラフィナ」
「なんでしょうか」
「お前は動くな、俺等でどうにかするからむやみにうろちょろするのはやめてくれ」
「え?あ、はい・・・」
「あ、そうだセラフィナさん」
「なんでしょう?」
「私達以外の思念体を見ませんでしたか?」
「うーん・・・思念体は見てないのですが・・・ただ・・・」
「ただ・・・・・?」
「なにか見覚えの無い、印のようなものが掘り込まれた柱のようなものなら見ましたよ?」
「印?」
「ええ、どうみても日本語ではなかったですけど・・・」
「よし、場所だけ言え、んでとっとと帰れ」
「ええー・・・・・」




俺達はセラフィナに教えられた場所へと向かった、確実にヤグレムの気配が強くなる、アタリと確信してもよいだろう。そしてまた一つ気になる事があった。
「おい平和の思念」
「なんですか?」
「あ、普通に喋った、さっきまでそこらへんで会った人間みたいだったのに、つまらん」
「ちょっと取り乱しただけです、もう大丈夫ですよ」
「心配なぞしていないが、それに静かで良かったのに、つまらん」
「ふふっ」
「何笑ってやがる」
「別に?」
変になった平和の思念が元の変な平和の思念に戻った。相変わらずムカつく、腹立つ、苛立つの三段活用だ。しかしなにやら安心した気もする、なにかいつもと違うと気持ち悪いからだ。言っておくと<ツンデレ>とかではない。そして俺達はその柱の元へと到着した、柱には円と線で構成された文字が刻まれており・・・読めない、全く読めない。むしろこれ何処の文字だ?古代文字、神代文字、異国の言葉の本も全部読破した、(といっても解読はしてない、文字の形を覚えただけ)しかしこんな文字は見たことが無い。図書館の文献でも歴史をまとめている小娘からかっぱらった本(見るに耐えなかったが)でも全く載っていなかった。
「何の文字だ?これ」
「さあ・・?私にも、さっぱり」
平和の思念もわからないようだった
「に、しても、ヤグレムさんは何処にいるのでしょうか・・・この柱から気配こそ漂っているのですが・・・」
「おい平和の思念」
「はい?」
「下がれ」
考えるのが面倒だった。




「 < 破 壊 弾 > 」




ゆっくりと放物線を描いて飛んでいく破壊弾、着弾と同時にものすごい極光が走り、周りのものを風圧で吹き飛ばしながら柱が木っ端微塵となった。ちょっと力を入れただけだったのだが何故かものすごい威力になっていた、違反がそこらじゅうに充満してるせいなのだろうか、とにかく自分が思ったよりも威力が絶大だったので自分でも驚いてしまった。漏れそうだった。出ないけど。
「お前はもう少し加減ができないのか」
その木っ端微塵になった柱のあった場所から声がした、ヤグレムの声だ。
「フヒヒwwwサーセンwww」
「ヤグレムさん!無事だったのですね!?」
「さて、イハン、お前のその調子にのった攻撃でここから脱出できたわけだが、私はお前と手合わせせねばならない」
「なんだと?怒ったのか?」
「え、ヤグレムさん?」
「ヴィヤズ、お前は下がっていろ」
「なんのつもりなのかわからんが・・・売られたケンカは買うがルールって奴だ!!」
「お前がルールなどと言うな」
ごもっとも。
「さあ、何処からでもかかってくるがいい」
そしてヤグレムとの戦闘が始まった、俺は突撃し無縁断を乱れ打ちした、涼しい顔して紙一重で回避するヤグレム、この光景最近見ました。
「おい」
「なんだ」
「お前攻撃する気ないな?」
「何故聞く?」
「それは・・・」
間違いない、表情には全く出さないがこいつもまた攻撃しないタチだ、なんで今日はこんな奴ばっかなんだ。なあやぐれむ、俺もう疲れたよ、なんだかとっても眠たいんだ。
「なんとなくだ」
「だったら無駄口叩かずに私を倒してみろ」
「相変わらず固い奴だ」
「・・・・・」
ヤグレムもまた攻撃してこないせいであのマントと姿が重なって怒りがこみ上げてきた、なんかマントに執着しすぎな気もするが腹が立つものはとにかく腹が立つ、そこまで倒されるのがお望みならば俺だって本気でぶっ飛ばしてやる。
「む?」
俺は口に膨大なエネルギーを収束した、本気でやるとちょっと思念体といえど危険な状態に陥りかねんので出力は多少抑えつつも大きめにする。最初は<そこ>に集める感じに収束、そして一気に密度を最高にして放つ!!


「破壊光線!!!」



ところが
「!?」
俺が放った破壊光線は思った以上に膨大な威力で射出され、俺は発射の反動で大きく後ろへ吹き飛んでしまった!
「ぐぅっ!!」
「イハンさん!!!」
「やれやれ・・・・・エンプティ・・・・・・ホール・・・!!」
俺の破壊光線はヤグレムの作り出した歪の中に吸い寄せられていった、すっぽりと破壊光線は収まり、歪は閉じていった、もうやめてくれないか、すごくデジャヴだから。やめてくれよ、やめろよ、やーめーろーよーぅ。
「返すぞ」
歪は再び開き、吸い込んだ破壊光線がこっちに向かって真っ直ぐ突っ込んできた、無論反動で吹っ飛ばされたあと体制を立て直している最中だったから避ける間も無く被弾
「させるかァ!!!!ベクトルアウトォ!!!!!!!」
俺の掌に納まった破壊光線は直進性を失い掻き消えた、威力が絶大なのか少々手に痛みがある、多少触れてから発動するので、人の力で振り下ろしたものなどはどうもないのだが、威力と物によっては凄まじく痛い、そして俺は<スターガン>を連射した、こいつには星攻撃が効かないのは知っている、だがもうヤケクソだった。
「真剣にやれ」
「うるせえよ、うるせえよ」


「<ゼロスター!!>」


奴が叫ぶと俺が放った星の軍が消えていく、直撃する射線のものや、はたまた謎めいた場所に飛んでいくものまで掻き消えていった。
「アー、ドンドンキエルネー、キレイダネーハカナイネー」
「もうダメだなこいつ、生気がなぶっ!?」
ヤグレムの言葉が途切れた事で我に返った、何があったのか見てみると、俺の放ったスターガンの一つがヤグレムに被弾していた、放心状態だったのでしっかり見ていなかったのだが確かに被弾していてヤグレムもやっぱり表情はそのままだが驚いている、気がする・・・
「どうだヤグレム!!!よくわからんし何が起こったかさっぱり理解に苦しむがどうだヤグレム!!」
「どういうことだ?ゼロスターで消滅しないだと?」
「は?」
「まあいい・・・戦闘は終了だ、お前の図書館に行くぞ、諸々の話はそこでしてやる」
「おい勝手に終わらせるなよ」
「あとイハン」
「なんだ」
「町の奴らはお前が柱を破壊した時に戻っているぞ」
「マジで」
「柱に関しても図書館で話してやる」
しかし、こいつの考えている事はいつもわからん、だれの指図も受けないし、何に興味があって何に無関心なのかすら理解できん。まるでマント野郎のようだ。マントばっかじゃねえか俺。しかし何が起こっているのかもわからない以上、ヤグレムの話にすがるしか無かった。
「おい、平和の思念」
「はい、なんでしょう」
「この勝負どっちが優勢だった」
「ヤグレムさんですかね?」
「チクショォォォォォオォォォォォォォォォォォォォォオオオオオ!!!!!」
今日という日は実に不幸だ。


―――――to be continuedoooooooooooooooooo!!!!!