動手帳思念大戦Ps-1 cp-0 パンドラの箱(ボックス)

思念体、うごメモに住まう者達の感情思想が形と成したもの、一般的には。


Ps-1 cp-0 パンドラの箱(ボックス)

しばらく続く雨、元々少ない客足がさらに減る困った天気だ、しかし図書館の一日は全く変わる事が無い、グリモワールが暴れまわり、クロニクルがそれを静止する、俺はただ本を読む。大体一日はコレの繰り返しで終わる。あとホットケーキをもりもりたべてる。
此処はうごメモ町の一角にたたずむ図書館、特に名前は無いのだが他の奴らは此処を<イハン大図書館>と呼んでいる。(極一部だが)
この図書館は俺(イハン=メモラー)と何故か此処の本の山にまぎれて封印されていた魔道書グリモア、歴史書クロニクルの三人(正確には1体と2冊)で経営している、が
本を読む風習が無いのか最近話題の<デンシカ>の影響なのか客は正直多い方ではない。大体来るのは格闘娘と・・・・・
「イハンさん?いらっしゃいますか?」
きやがった、平和の思念体、名前は忘れた、呼ばないから。(ちなみに名前はヴィヤズ)
こいつは俺と同じ<思念体>で性質は<平和>、傘をいっつもぶら下げてるからか雨の日も平気で来る。
本を読むだけならともかくしつこいくらい俺に突っかかってくる、ソレも毎日だ、勘弁してくれ。くんな、こっちくんな。むしろ死んでくれてかまわない。しかし客であることに変わりないので普通に接する事にする。別に追い出してもいいけど接する。
「何の用事だ平和の思念」
俺は無愛想に言った、一方奴は相変わらずニコニコしている。何なのこいつマジで。
「あらら、わかりませんか?図書館は本を読みに来るところでしょう?」
「じゃあ黙って本を読んでおけ、気が散るから俺の目の届かない所でな」
「嫌われてるんですかね、私」
「当たり前だろバカ」
などと言っていると・・・
「とか言ってるけどさ」
「ほんとうにきらいならすぐにおいだしてるよね」
さっきまで暴れていたグリモアとクロニクルがこちらに駆け寄りながらそう言った。余計な事言うときだけは随分おとなしい、普段からこの状態を保てないのか。
いや、保てないから図書館が半壊するのだ。その上本のクセに人間と同じく腹が減る、食費もかさむし・・・もうこいつらいらない気がしてきた。でも追い出さない、片付けする奴がいなくなるのは困るから追い出さない。一度こいつらのいる生活に慣れると追い出そうにも追い出せない。追い出す追い出さないしか考えてねえじゃねえか俺。
「しかしお前も物好きな奴だな、全く正反対の性質を持つ俺の所によくもまあのこのこと飽きずに来るもんだ」
こいつの性質が<平和>なのに対し、俺の性質はその名の通り<違反>、このうごメモにおいて最も平和を脅かす存在だ。
「ここには貴重かつ興味深い文献がたくさんありますから、それにイハンさんもお客が来るほうが暇じゃなくていいでしょう?」
「俺はお前が思うほど暇じゃないぞ」
「そうだったっけ?」
「おぼえてなーい」
実際は本を読むしかやる事が無い、もしくはこの町に住民に悪戯をけしかける事ぐらいだ、暇といえば暇だがこいつには暇だと言いたくない、皮肉混じりに小ばかにされそうだからだ。
「それにしても・・・」
「?」
「ここのところ雨ばかりですね・・・」
「いきなり話変えんな、まあ・・・そういえばそうだな・・・客足が途絶えるし勘弁してくれマジで」
「私に言われても困りものですが・・・」
「ところでだ」
「なんでしょう」
「どうにも不穏な感じがする」
「随分話が変わりますね、ですが・・・奇遇ですね、私も同じです」
本2冊は何も感じないようだが朝からやたらと不穏な気配がする、気のせいかとも思ったが平和の思念と意見が合致したことで確信に変わった、同じ考えなのが気に喰わないが今はそんな事を気にしている場合ではないのかも知れない。でもやっぱ気に喰わない。
なんて思っていると。
「イハン=メモラーの大図書館はここかい?」
という声と同時にゆっくりと扉の開く音がした。
扉が開くにつれて<不穏な気配>が強大になる、こいつは間違いなく<客ではない>
「イハン・・・?」
「なんかやばそうだよ・・・?」
「お前らは下がってろ!!」
「イハンさん・・・これは・・・」
「なんだ、本格的にヤバイ気がしてきたぞ・・・」
扉が開ききったそこにいたのは、<学ランに鉢巻姿の男>、<物静かそうで何処か不気味な雰囲気の女>、そして<漆黒のマントを羽織った男>だ。
俺が見る分こいつらは<全員思念体>だろう。いやマント野郎以外誰がみてもわかる。
「思念体が揃いも揃って一体何の用だ?客じゃねえならとっとと帰ってもらうが?」
「うーん、そうだね、僕達は君の言う所の<客>ではない、いや、<招かざる客>の方がしっくりくるかな?」
「ならとっとと帰ってもらおうか、招かざる客ならなおさらお呼びではない」
「まあそんな固い事言わないでくれよ、別に大した用じゃない、すぐに済むことだよ、<君がこっちの思う様に動いてくれればね>」
「なんだと!?」
「ヴァーサク!エンヴィー!!」
「やっとお呼びか?命令ならさっさとしろ」
「用件は?」
「イハンは僕が相手をする、君達は外野の相手をしてやれ」
「あいよ」
「了解しました」
部下っぽい2体はそう言うと俺と黒マントを残して平和の思念達の方へとまっすぐ飛んでいった。
「ただでは帰ってくれなさそうだな」
「そうだね、ただでは帰れない、君の力をもらいに来ただけだから」
「俺の力だァ?」
「そう、君の力、それだけもらえたら早急に帰ってもいい」
「ナメた事言ってくれやがるぜ・・・!!」




「すみませんが、そこをどいていただけませんか?手荒な真似は最小限に抑えたいのですが・・・」
「あ?随分甘い奴だな、わざわざ足止めに来たっつうのに易々と道を譲ってたまっかよ」
「平和の思念体、ヴィヤズか・・・何をそんなに急ぐ必要がある?私達を平和的に納める事などできないぞ?」
「今あなた方の上司をイハンさんを戦わせるわけにはいかないのですよ、無常にも今のイハンさんがかなう相手ではないのでね」
「美しき友情・・・かしらね?実に妬ましいわ」
「そんなくだらねぇ理由でどけっつってんならなおさら退くワケにはいかねえな、最初から退くつもりはねえけどよ!!」
「話を聞き入れてもらえないようで残念です、ならこちらも望まぬ手段を取らざるを得ませんね」
元からこの2体はイハンさんと彼等の上司を孤立させ、私達を足止めさせるのが目的だったのだろう、同族を攻撃するのはあまり気が進まないが聞く耳が無いので仕方が無い。というかよくよく考えたらそんな暢気な状況じゃない。おそらくイハンさんは相手の力量はお構い無しに突っ込んでしまう。一目見ただけでわかってしまうあの邪悪な気・・・イハンさんといえど勝つのは間違いなく困難であろう、意地でも止めなければならない。
「ヴィヤズさん!私達も加勢します!」
「きゅうりのおいしいたべかたのむげんのかのうせいについてかんがえてみようとおもった」
「うるさいよ」
クロニクルさんが前に出た、その手にはグリモアさん・・・いや、<究極の魔導書・グリモワール>を手にしていた。
「これでフェアですね、早急にそこを通してもらいますよ」
「やれるもんならやってみなァ!!」
「来ます!ヴィヤズさん!!」
「!!」





奴が何を考えているのか一向にわからない、スターガン、極楽昇天、シューティングバレットスター、無縁断、何をしたところであいつは紙一重で回避してくる。恐怖幻覚に関しては一切通用していない、恐怖するものが無いということだろうか、バカバカしい。しかも反撃すらしてこない、回避しては多少こちらを煽ってくる、態度やらで既に十分腹が立つがこの煽りが余計癪に障る。まさに怒りが有頂天って奴だ。あと謙虚な言葉だ。
「何のつもりだ?そっちからふっかけてきといて何もしないとは」
「だから最初に言ったじゃないか、君の力を貰い受けに来たと、ソレをもらったら早急に帰るとも言ったハズだ、何度も言わせないでもらえるかな、耳も頭も悪いワケではないだろう?僕は別に君を倒しに来たつもりは無い、言うとおりにしてもらえればそれで済む話なのに、わざわざ長期戦にしているのは君の方だ」
何度聞いてもこれしか言わない、確かに言うとおりにさえすればこんな面倒な事、瞬間で終わる。だが言うとおりにしたら負けな気がする、こいつは此処に入ってくるだけで不穏な雰囲気をかもし出していた、何かたくらみがあるのは確実だろう、雰囲気もそうだが、ついでに見た目も不穏。てか不審者の域。
「<力>か、そういえば俺の力なんか使ってなんのつもりだ?」
「僕が何か企んでいるとでも思っているのか?」
「思っているから聞いている、第一俺の力ってのはどうせ違反の力、この世界に害を成す忌み嫌われた存在、良くない企み以外の使い道なぞあると思えん」
「へえ、なかなか鋭い、褒めてあげる」
「考えなくてもわかる、うちの魔導書以外はな」
「鋭いのはいいけど、何を目的に力を欲するのかを教えることはできないね」
「まあ別に教えてもらわなくて結構だ、どのみち貴様に力はやらん」
「流石は違反の思念体、天邪鬼だったり気紛れだったり、挙句の果てには捻くれてて自分勝手だ、こっちの話には全く耳を傾けてくれない。まあ、君がそのつもりなら別にいいよ、君に力を渡す気が無いなら君をそのまま媒体にしてでも力を取り出す、そのためには君をぶっ飛ばさなければならない」
「やっと本気か?随分なスロースターターだな」
「普段は力を使わないだけさ、僕の力はあらゆる思念思想をも凌駕する」
「ほざけ」
「ほざけ」
するとどうだ、奴の真っ黒なマントはみるみる形を変えていく、既に禍々しいのに余計禍々しくなっている、なんか突起が増えてる、てか伸びてる。ようやく気づいたのだ、だが気づくのがあまりに遅すぎた、<アレはマントではない>、俺等思念体が普段下半身にそろぞれ固有する霊体のようなもの、<その霊体が奴の場合その体を覆うマント>だった。
既にそのマントは鋭く形を変え、エネルギーを収束するような突起が3つ円を描くように俺の方向を向いていた、そうそれはまるでレールガンのような。しかしなぜオウムがえししたんだ。
「さあ問題だ、イハン=メモラー
「あ?」
「今から出す技の名前を当ててみせてよ、ヒントは君の良く知る技だ」
「・・・さあ?」
本当はわかってる、もう嫌な予感しかしない上、今まで経験した事無いくらい背筋が凍る。
「正解は・・・・・」
「・・・・・・・・」





「 < 破  壊  光  線 > 」




収束したドス黒いエネルギーが<レールガン>から高速で発射された、俺の嫌な予感はハズレを知らない。それは俺が知っている破壊光線とは違っていた、俺の放つのは完全に直進する赤黒い光線、だが奴が放って来たのは電撃のように不確定な起動を描きつつ直進的に飛ぶ真っ黒で真っ黒でとにかく真っ黒な光線。ちなみにこの思考の間僅か0、2秒。俺は頭が回るんだよ、バカじゃないよ、ホントだよ。




とてつもない轟音、まさか破壊光線を自分で浴びる時が来るなんて思っても見なかった。俺のとは別物だけど。あと散らばる本の山、ぶっ飛ぶ本棚の残骸、ああ片付けがめんどくさい。
「おせえんだよタコ」
「文字通りの間一髪ってやつですかね?」
「かんしゃのねんをのべてもいいのだよイハンくん」
「うるさいよ」
平和の思念と本2冊が野暮用済ませて戻ってきたのだ、平和の思念の傘、グリモアの魔法壁が俺を破壊光線の直撃から防いだのである。だが・・・
「参りましたね」
「ここまでつよいなんてね・・・」
平和の思念の傘は原型を留めてない程にボロボロ、グリモアは魔法壁の具現のために地に置いていた手が衝撃のあまり力が入らずぶらぶらしている。この光景こそ奴の破壊光線がどれぐらいの威力なのかを物語っていた。俺はなんだか腹がたっていた、破壊光線は俺だけの唯一無二の技と思っていたのに、突如強力な同名の技をかまされると無性に負けた気分になって怒りがこみ上げてくる。
「もう戻ってきたのか、僕の<友達>は何をやっている」
「彼等ですか?彼らなら私達が伸して来ましたよ?みねうちですけどね」
「<ヴァーサク>は破壊力を解放するのに時間がかかる、<エンヴィー>は嫉妬の念が足りないと雀の涙程度の力しかない、戦わせるのは早かったか」
「どうします?人数的にこちらが圧倒的です、目的の程はわかりませんが、あまり手荒なマネは止した方がいいと思いますよ?」
「確かにね、僕の破壊光線をギリギリとはいえ止めてしまったんだ、君達とまともに戦ったら<無傷>では済まないだろうね、でも・・・」
「でも?」
「イハン=メモラー?」
「なんだ」
「君はしっかり見ていたはずだ、<僕の破壊光線>をね、君は自身の破壊光線が最強だと思っているのか知らないけど、君はあまりに弱いよ、僕には到底及ばないだろうね」
カチンときた、やたらカチンときた。
「テメェ・・・もういっぺん言ってみろ」
「イハンさん!!いけません!!挑発に乗っては・・・!!」
平和の思念が何か言った気がしたが俺には何も聞こえてなかった、俺を侮辱したこのクソ思念体の姿しか見えていなかったのだ。
「君は弱い、そう言ったんだよ?なんども言わせないでくれ」
「お前適当な事ぬかすな、殺すぞ?」
「じゃあ試してみなよ」
「?」
「君が破壊光線を使えるのは知っている、それとなく調べたからね、僕の破壊光線は見せてあげたんだ、君の破壊光線、見せてくれてもいいだろう?もしかしたら弱いって言ったのが僕の思い過ごしかも知れないしね」
「・・・・!!イハンさん!!いけません!!これは・・・!」
今度はしっかり聞こえて我に返ったが、もう遅かった。


「破壊光線!!!!」


「来たね?」
奴が不適な笑みを浮かべて言った、そして・・・
パンドラの箱(ボックス)!!!」
赤黒い閃光が奴に向かって伸びていくのと同時に奴は突如叫びだし、奴の目の前には奴をすっぽり覆いつくしてしまうほど巨大な鏡のようなものが出現した、するとどうだろう、破壊光線はみるみるとその鏡に吸い込まれてゆき、最終的に全て飲み込まれてしまった。奴が求める俺の力とは最初から破壊光線だった、<俺の>破壊光線は暴言中傷からなる違反の力の凝固した形、奴はソレを狙っていたのだ。俺はまんまと奴の手の内で踊らされていた。
「流石は違反の思念、真に単純な思考だな、自分より優れた同名の技を見て苛立ちを覚えてくれるのは計算の内だったが、ここまで綺麗に事がうまく運べると逆に君が哀れに見えるよ」
「貴様ァ・・・!!」
「最初に言った言葉を覚えてるよね、<力さえ手に入ればすぐ帰る>。ヴァーサク!エンヴィー!帰還するぞ!!」
奴らの部下が後ろから飛んできた、平和の思念達が伸したといっていたが、ケロッとしている、おそらく奴の破壊光線を防御しにくるのもまた計算の一つだったのだろう。完全な敗北を味わってしまったのだ。
「ところで、<あいつ>はどこ行きやがったんだ?」
「彼がいないのはいつもの事だろう?彼は好奇心旺盛だからね、勝手にどこにでも行ってしまう」
「あまり放し飼いは良くないかと・・・」
「まあ、彼には注意しておこうか、じゃあ、なかなか楽しかったよ?イハン=メモラー。君とはまた会うことになるかもしれないね」
「チックショォォォォォォォォ!!!」
俺が叫んだ時すでに奴らは扉の外で姿を消していた、外は既に雨がやんでいるが、曇り空だ、図書館の空気もその空模様と同じだった、俺はまんまと奴の策略にハマり、普段騙されるはずの無い平和の思念ですら奴の目論見を最後の最後でしか気づく事ができなかったのだ。いや、こいつは気づいていたのかもしれない、普段からこいつの話には耳を貸したりしないが、今回ばかりはこいつの言うとおりにするのが正解だったのだろう。外では灰色の空がゴロゴロとうなっている、俺を笑ってるのだろうか、笑いたければ笑うがいい、今の俺は何をされようがいくら笑われようが怒りません。本当です。いややっぱ少し怒る。
「イハンさん・・・」
「さて・・・片付けするか・・・」
何も何時までもネガっていても仕方が無い、奴が俺の破壊光線から手に入れた違反の力で何をするつもりなのかは結局謎だが、落ち込むのは正直俺らしくない。まずはこの散らかった図書館を掃除しよう、そうすれば少しは気がまぎれるかもしれん。といっても大体はグリモアの魔法頼みなのだが(楽だし)
「私もお手伝いしますよ」
「なんかお前に手伝われるの嫌なんだが、まあいい、散らばった本を一箇所に固めろ、そうすればあとはグリモアが直してくれる」
「ふふふ、あたしがいないとなにもできないのだな、だからおまえはアホなのd」
「うるさいよ」
「今日のグリモアさん、なんかあらぶってますね」
「どちらかといえばいつも通りだな」




何時にもまして時間がかかったがどうにか片付いた、グリモアはまた手がブラブラしている。
「ではイハンさん、今日のところは失礼しますね」
「来る頻度下げろ目障りだから」
「来るな、とは言わないのね」
「うるせぇよ」
そして平和の思念は扉の先に消えた、なんか開放された気分だ、いろいろと。俺は突然の来訪者のせいで読みかけだった本を手にとり、再び本を読み始めた。
と思った矢先。
「イハンさん!!」
「何故戻ったし」
どうして戻ってくる平和の思念、目障りだって言ったのに。本読みたいのに。
「外に出てください!!早く!!」
「なんだうっせえぞ、はしゃぐな」
そう言って平和の思念につられるままに俺は外に出た。するとどうだろう。
「んだこれ・・・!!?」
平和の思念が声を荒げてまで慌てている理由。それは。







空が、真っ赤だった。





夕日だとかそんなのではない、完全な真紅色、見渡す限りの空が血のように真っ赤だった。そして微かに感じるこの感じ、<違反>だ、この世界全土から<違反の力>を感じる。思い当たる節は奴しかいない。
「あのマント野郎・・・・!!!」
「これがあの方達のやりたかった事なのですね・・・何故こんな事をするのか真意は謎ですが・・・」
「おい、平和の思念」
「なんでしょう」
「この<違反>はお前も感じているだろう」
「ええ」
「もう一つ感じるものは無いか」
「ええ、微量ですけど、灰色の感情を」
「ヤグレム・リソプディか・・・・」
「どうかしましたか、イハンさん」
「嫌な予感がする、そして俺の予感は外れたことが無い」
「ヤグレムなら何か知っているかも知れません、この灰色の感情を微量感じるということは彼女はまだ近くにいるハズ・・・」
「よし、探してたっぷり絞って来い」
「え?イハンさんも来てくださいよ?」
「えっ」
嫌な予感は確かにしたが、めんどくさかった。本読みたい。
その後平和の思念に無理やり引っ張られた、こいつこんな強情だったっけ。

―――――to be continued