動手帳敦喪失 〜Gianism ridiculous.

動手帳敦喪失 〜Gianism ridiculous.

あらすじとかキャラ設定とかエキストラストーリーとか


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■0.あらすじ
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 涼しい気候の続く日陰の地。
 木々はすっかり新緑の色に染め上がっており、
 この涼しさがやがて夏の蒸し暑さへと変わるのも、時間の問題だろうか。

 唯一の神社である神明神社はというと、相変わらず過ごし易い環境であるが
 相も変わらず参拝客は来ない。
 変わった所があるとすれば、それは時として見知った妖怪達が沸いて出る事と
 もうひとつは・・・・・。

 神巫「」

 神社の境内のど真ん中、竹箒を携えた少女が、口をパクパクさせながら、
 声にならない声を放ち、唖然として立ち尽くす。
 何やら尋常ならざる事態のご様子。

 神巫「ない・・・ない・・・ない、ない・・・」
 黒奈「おい!大変だ神巫!!私の―――」
 神巫「私のお賽銭箱がなあぁぁぁぁぁぁああぁあぁい!!!??」

 慌てた様子で境内へとやってきた詐欺師の少女、鳴神黒奈の声を無慈悲に踏み潰す
 かの如く、この世のものとは思えない叫び声を上げる神明神社の巫女、名を伊沙弥神巫と言う。



 神巫「勝手に動き出す訳も無いだろうし、盗まれたって考えるのが妥当かしら」
 黒奈「でも変な話だと思わないか?」
 神巫「何がよ」
 黒奈「あんな賽銭無銭な木箱を掻っ攫っても何の得も無いと思うが」
 神巫「有る」
 黒奈「えっ」
 神巫「有る」
 黒奈「・・・・・まあそれでいいか」
 神巫「それで?アンタは何なのよ」
 黒奈「私か?私は・・・」

 黒奈が用件を言おうとすると、また境内への来訪者の影。
 黒奈同様に随分慌てた様子である。 

 霊羽「神巫さんどうしよう!!」
 醴黄「私達の杯と箒が無くなっちまった!!」

 箒天人、針翠霊羽と、鴆妖怪、附醴黄(フー リーファン)の姿であった。
 片や妖怪、片や天人であるが、お互い『毒』仲間という事もあり、交流を持っているらしい。

 神巫「貴女達も何か無くなったの?」
 霊羽「あれ、なんだか神社に開放感が・・・」
 醴黄「あ、ホントだ。じゃ無くてだ、私達だけじゃない、今やあちこちで所持物が無くなったって大騒ぎだ」
 神巫「私も賽銭箱をやられたのよ、これは本格的に異変の臭いがするわね・・・黒奈?」
 黒奈「はいはい安心しろ、面白そうだからついて行くとも」
 神巫「よし、それじゃあ有無を言わさず出発よ」

 そう言いながらいつものようにアテも無く飛び出す二人、一方で取り残された天人と妖怪は・・・

 霊羽「・・・・・賽銭箱無くなったって・・・」
 醴黄「あっても無くても変わらなくないか?」



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■1.キャラ設定
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◇プレイヤーキャラサイド

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 ○神明の巫女
  
  伊沙弥 神巫(いざなみ いちこ)
  Izanami Itiko

  種族:人間
  能力:霊力を操る程度の能力

  神明神社の巫女さん。
  賽銭どころかついに賽銭箱さえ無くなってしまった巫女さん。

  真面目で常識のある人間だが、信仰と賽銭の話になると
  不安と焦りで色々気が気でなくなる。

  消失したアイテムは賽銭箱。

  
  各々の所有物が忽然と姿を消したという情報を手に入れ
  黒奈とほぼ目で会話しながら出発した。

  妖怪と天人も連れて行けば良かったかと考えるも
  結局邪魔になっては困るので置いて行く事にした。


 ○疾風迅雷の詐欺師

  鳴神 黒奈(なるかみ くろな
  Narukami Kurona

  種族:人間
  能力:電気を操る程度の能力

  人里とも神社とも離れた小屋でひっそり住まう詐欺師。
  何やらちょっと焦り気味だった詐欺師。

  彼女を突き動かすは感性と好奇心、あとはお金の臭い。
  シーチキンはジャスティス。

  消失したアイテムは・・・


  結局神巫に用件は言えず仕舞い、彼女も異変の被害者であり
  とあるものが無くなってしまっているが、彼女もそんな事は忘れてる様子。

  今日も今日とて、「面白そうだから」と神巫に同行する。

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◇敵キャラサイド

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 ○一面ボス 忘れ寂れた憑き人形
  
  京樹佐多 吉街(きょうきのさた よまち)
  Kyoukinosata yomati

  種族:付喪神
  能力:理解を遮る程度の能力

  新品時に可愛がって貰い、腕が解れたのを境に愛されなくなった熊の人形。
  その境遇もあるためか、友達と遊び相手を探している。
  彼女の存在を否定してしまうと、彼女の人形にされてしまうとかそうでもないとか。

  
  異変の影響によって、抱えている熊の人形が消えて無くなるという事は無い様子。
  特に異変に関わったという訳でもなく、ただ偶然通りかかっただけの人形に過ぎない。
  しかし、遊び相手を探す彼女にとって、その二人の人間の存在がどうでもいい筈も無く、
  そのまま弾幕勝負へと発展してしまう。

  勝利後、彼女から「昇天する沢山の物」の情報を手に入れる。
  目的地が上だと分かった彼女達は、ある人物の元を訪れる事にした。


 ○二面ボス 無駄に謎を呼ぶ化け狸
  
  斑若 蘭香(まだらわか らんか)
  madarawaka ranka

  種族:妖怪
  能力:事態を難航させる程度の能力

  見知った場所なのにふと気が付くと迷っていたり。
  目的地に到着してからその場所での用件を忘れるといった事態に遭遇した事があるだろうか。
  そんな時は大体この狸に化かされている。物事をとにかく難しくしてしまう迷惑極まりない存在だ。

  自称探偵の狸妖怪。自称なだけあって安心と信頼の解決率ゼロ。
  決して自分で自分を化かしてる訳ではなく、元からこういう頭の仕組みしてるだけなので仕方ない。

  消失したアイテムは虫メガネ。

  
  木々生い茂る森の中で人間達にばったりと遭遇する彼女。
  こんな大混乱の中で森の中をうろうろする存在とはあまりにも怪しいと睨み、
  中々その思考は冴えている、つまりお前もだよ。
  犯人確保&初手柄のために人間達に挑むがまあ無理だよね、犯人じゃないもんね。

  突如横槍を入れて来た狸とのひと悶着を済ませて一息つく巫女と詐欺師。
  しかし、そこは木々連なる森の中、右も左も分からぬ状況。
  彼女は既に、あの忌々しい狸に化かされていた。あ、上と下は分かります。


 ○三面ボス 腐らずこんがり芋妖怪
  
  幕揚 千草(まくあげ ちぐさ)
  Makuage Tigusa

  種族:妖怪
  能力:腐敗を操る程度の能力

  森の中に住居を構える、わりと人間的な生活観を持つお芋の妖怪。
  棲家にある芋畑と、森の中で拾ったり、採ったりしたもので生活をする。
  人間にも優しいますます妖怪らしさの無い妖怪だが
  心の腐った人間は毛嫌いする。
  あの狸とも面識があるが、森の中の地の利は完全に把握しているため、
  彼女が化かされたりはしないようだ。

  森の中で何やら振ると金属が擦れる音のする巾着を発見。
  それは黒奈の所持品である汚いお金。そう、黒奈が神社で言おうとしてた
  用件とは、この汚い金を紛失した事である。確かにお金落とすのは一大事だ。
  だがこのお金は一切異変とは関係無い。落としただけだからな。

  消失したアイテムは無し。拾ったアイテムは汚いお金。

  
  道無き道にに迷った挙句、同じ所を周回している人間達。
  それに声をかける彼女だったが、その手に持っているブツを黒奈は見逃さない。
  お金を奪われたと思った黒奈のせいで流れのままに弾幕勝負。

  もちろん勝負がつけば黒奈に返還。元より奪うつもりなどないのだから。
  どう見ても迷っている人間達を哀れんだ妖怪は、人間達に正しい道を指し示す。
  妖怪に助言されるのは巫女としてどうなのかと思ったが、状況が状況であるために
  素直に感謝する神巫であった。


 ○四面ボス 儚き花の半人半妖
  
  浅間 桜(あさま さくら)
  Asama Sakura

  種族:半人半妖
  能力:儚くする程度の能力

  人と妖怪の間に生まれたハーフの少女。
  しかし親は彼女を捨て、消息を絶ってしまった為に
  一人で花屋を営んでいる。

  真面目で落ち着いているのだが、物事を重く捉え、燃え上がってしまう少々困った性格。
  人間的な理性を持ち合わせる一方で、妖怪的な野生じみて好戦的な面もある。

  所有物が無くなったと嘆く人々、自分が大切にしていた花の消失。
  それが引き金となり、人々と花を守る名目で異変に首を突っ込む。

  消失したアイテムは花。


  植物の声を聞く事の出来る彼女は、植物から得た情報を頼りに今回の異変の元凶の元へと
  向かう最中だった。
  ところがそこでばったり出会ってしまうのは狸の幻術から抜け出した毎度おなじみ二人の人間!!
  同じ目的を持つもの同士、協力姿勢でも築けば良いのだが、どうにもそういう訳にはいかない模様。
  皆血の気が多すぎる。
  負けた方は情報を置いて異変から手を引く、と言うのを条件にいざ開戦。


  結局勝利したのは巫女と詐欺師。翌々考えてみたら2対1なのだからフェアではない。
  『天人の仕業』だという情報を開示し、桜は潔く今回の異変から手を引いた。
  行き先が天界に絞られたが、どの道ある人物を尋ねる事に変化は無し。
  人間達は、その『とある人物』の工房へと急ぐ。


 ○五面中ボス 高き目指す花火娘
  
  敦出池 叶多(とんでいけ かなた)
  Tondeike Kanata

  種族:天人
  能力:天まで届く程度の能力

  引き続き出番があった花火天人。
  自らの工房を作り、あの一件以降、地上での活動も多くなった。
  だが地上特有の「穢れ」によって、物の管理が天界のようにいかず多少困っている。

  彼女の力は天まで届ける力、天界だろうが宇宙だろうが、簡単に目的のフライトを指定してくれる。
  『とある人物』というのは、紛れもない彼女の事。
  人間達は一応自力でも天界には行けるのだが、手っ取り早いので彼女の力に頼る事にしたのだ。
  
  彼女も無論、今回の異変の事た知っているようだが、あまり天に届けるのは気が進まない様子。
  人間達は(ほぼ不意打ちに近い形で)力で分からせる事にした。


 ○五面ボス 轟く神鳴り
  
  神宮 雨依(かみや うより)
  Kamiya Uyori

  種族:雷獣
  能力:仰天させる程度の能力

  雷雲の中に住む雷獣。一応妖怪である。
  地上に降りる際、自然現象の落雷としてそれは現れ、雷の落ちた所には彼女がいる場合がある。
  自らに害を及ぼす存在や、落雷の傍にいた者に対して『毒気』をあてて錯乱させ、
  その毒気にあてられたものは気がふれてしまったり。失意に襲われて廃人になる。
  いずれも玉蜀黍を食べる事で治せるらしい。

  
  叶多の能力で天界まで一直線、という所まで来た人間達だったが、雷雲の中を駆け抜けている時に
  彼女に絡まれてしまう。
  天界にいるという主のしている事自体はあまり良しとは思っていないが、
  主を人間達から守るために弾幕勝負を挑む。


  かつて、地上に死に絶えんとする一匹の獣がいた。
  その獣は妖怪でも何でもない、本当に何の変哲も無い一匹の獣。

  獣には後悔の念も何も無かった、所詮はただの獣である、死を悟れば、それで終わるのである。

  そうして死を待つ獣だったが、朦朧とする意識の中で、その獣は人の影を見た。
  それは、宝玉を抱える一人の天人の姿だった。

  天人は獣に声をかけるが、獣には声を上げる程の力さえ残されていなかった。
  それを哀れんだ天人は、少々渋りながらも抱えていた七つの宝玉を地に置き、何かを唱え始める。

  するとどうだ、朦朧とする意識の中で、獣の目に飛び込んできた光景は、想像を絶するものだった。
  先ほどまで青く澄んていた空は忽ち雷雲に飲み込まれ、雷が轟き、風が吹き荒れる。
  そしてそこから姿を現したのは、さらにその雷雲を埋め尽くす程に巨大な龍の姿。

  圧巻だった、生きている間のこれほどのものを拝む事が出来るとはと、獣は内心驚愕した。

  膨大な威圧感に押されながら、天人は何かをその龍に告げる。
  その何かを聞き入れた龍は、薄れ行く意識の中でもハッキリと聞き取れる程の雄叫びをあげた。

  そしてその瞬間、雷雲の中から一筋の雷光が飛来し、獣を貫いた。
  獣には何が起こったのかわからない、だが分かった事があるのは、たった先ほどまでに感じていた
  苦しさから開放されていた事だ、とうとう召されるのかと獣は思った。
  
  ところが、それはただの獣の勘違いでしか無い。
  獣は龍の力によって生きながらえる事が出来たばかりか、姿も大きく変わっていた。
  神の雷をその身にに受けた事で、雷獣の妖怪として、獣は生まれ変わったのだ。

  地に置かれた七つの宝玉は石となり、やがてそれは一人でに各地へと飛び去っていった。

  「もしかすると、あの綺麗な石は二度と見つからないだろうね」

  天人は言った。だが、獣、もとい雷獣にはそれが誰に宛てた言葉なのか分からなかった。

  「あの石探すのすごく大変だったのに、貴女を助けるのに使って飛んでっちゃったじゃん!!」

  その時初めて、雷獣はそれが自分に対しての言葉だと知った。だが内容に関しては知った事ではない。

  負けじと雷獣は言い返すものの、天人も一切引き下がらない。
  
  結局、その口喧嘩は暫く留まる事を知らなかったと言う。
  今も時々、天界の一角でやかましい声が聞こえるのだとか。

  一方の雷獣は、どうにも感謝の意を伝えるタイミングを逃し、未だに言えないでいる。


 ○六面ボス 全て其処に在る欲望
  
  敦出池 床下(とんでいけ どこか)
  tondeike dokoa

  種族:天人
  能力:手に届く程度の能力

  今回の異変の黒幕。
  何処かで聞いた事があるだろうその苗字。
  花火天人敦出池叶多の妹その人である。

  自分の手の届く所にあるものは全て自分の物という、何処かのガキ大将でさえ真っ青な
  自己中心的なワガママ少女である。その上奪ったという自覚は無い。
  手に届く能力とは、そのままの意味、彼女が欲しいと思ったそれは、
  『彼女の手に届く範囲に有る』事になるという、少々常識破りの能力。
  これによって様々な人の物を奪ってきたために、あまり友好的な人物は少なく、親友と呼べる存在も雨依しかいない。
  勿論、雨依を親友だと思っている事は本人には言ってないし本人も知らない。

  姉の行方を追って天界を捜索するも、その天界には姉の姿は無く、姉が興味を示したとされる
  地上にまでやってきた。

  流石姉妹とでも言った所か、地上のあらゆる物は彼女の好奇心さえも刺激し、悪いクセで欲しいと思った
  品々を片っ端から天界に持って帰ってしまった。その結果、この異変へと発展したのである。


  幼い頃からその独裁っぷりは健在であり、姉を同じものを手に入れようが、姉の物さえしっかり奪う。
  姉に与えられたあらゆる物は全て奪いつくしてしまう程だった。
  しかし、それを悪びれる様子も無く、返す事もしなかった。
  返したとしてもそれは既に「彼女の手に届く所」にある品だっただろう。

  悉く姉に与えられた物を奪っていった末、姉の心の中で芽生えたもの。それは「退屈」。
  それに耐えかねた姉はとうとう家を出て行ってしまった。
  
  
  叶多が天界に送るのを渋ったのは、少しでも彼女の起こした事に関わりを持ちたくなかったからである。
  相当嫌われてる。


  人間達は、彼女の住居へと到達する。それは一人で住むにはあまりに広い屋敷。
  その殆どの部屋が、物置と化していた。
  この全てを返す気などない、それどころか、自分の物だと言い張る床下。

  これは一度灸を据えてやる必要がありそうだ。


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○エキストラストーリー
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 床下にキツめのお灸を据えてきた神巫と黒奈。
 奪われたアイテムも無事に持ち主の元に帰り、事態は事なきを得た。

 それから数日後、いつにも増して暖かな気候に包まれた日陰の地。
 すっかり異変による騒ぎも収まり、神明神社では、叶多と神巫、
 それに桜が茶を啜りながら駄弁っていた。

  桜「なるほど、そのような事が・・・」
 叶多「いやはや、こう、なんというかスカっとしたね!!」
 神巫「アンタねえ・・・ちょっと妹嫌いすぎじゃない?」
 叶多「一応仲直りは済ませたよ、まさかアイツから謝って来るとは思わなかったけど
    それとは別にアイツが縮こまるレベルで痛い目見たってのが爽快なんだよ」
 神巫「中々に悪い趣味ね」

 その後床下は、雨依に連れられる形で叶多の元を訪れ、今までしてきた事を謝ったらしい。
 それで叶多が許したかというとそんな事は無い。
 だが一応仲直りという名目で、彼女も床下を避ける事はやめたようだ。

 叶多「姉妹というのはね、身内間じゃないとわからないような感情が渦巻くものなの」
 神巫「そういうものなのかしら」
 叶多「貴女にはちょっと分からないかもねぇ」
 神巫「まあ私としてはこのお賽銭箱が戻ってきたからそれでいいんだけどね」
 叶多「貴女はそれで違いないのかもね」
  桜「私は喧嘩が出来る身内がいるというだけで羨ましいなあ」
 叶多「居ないと確かに物足りなさはあるけど、居たら居たでそれに勝る鬱陶しさを持った
    存在は居ないものだよ」
 神巫「それを聞いたらなんか納得だわ、似たようなのは確かにいるし」
  桜「あの黒い人ですかね」
 神巫「ええ、あの見た目も心も真っ黒な人よ」

 そう言いながら、三人は同時に手に持った茶を啜る。
 実に穏やかな時間が流れる。日陰の地の午後。

 叶多「さて、邪魔したね、私はそろそろ工房に戻るよ」
 神巫「あら、もう帰っちゃうの?」
 叶多「今作ってる花火もあるからね、地上は物の劣化を気にしないとだから大変だ。
    ご馳走様、今度天界の桃でも持ってくるよ」
  桜「でしたら私も、あまり長居しても迷惑ですから」

 そういいながら、神社を後にする叶多と桜。
 飛び立つ二人を見送った後、再度茶を啜る神巫。
 実に穏やかな時間が流れる。日陰の地の午後。
 ところがその穏やかな時間を破壊せんとする人影が、
 慌てた様子で境内へと入ってくる。鳴神黒奈だ。

 黒奈「おい!大変だ!神巫!!私の――」
 神巫「今度は何?またお金でも落としたのかしら?」
 黒奈「私の『縁結石』が無い!!!」
 神巫「おまっ、えっ、ちょ」

 縁結石とは、黒奈が所持する世界を結ぶ不思議な石の事である。
 この日陰の地から別の世界へのホールを生み出し、世界間を自由に行き来するためのアイテム。
 黒奈はこの石を使う事でシーチキンを調達しているのだ。海はあるけどじゃあ鮪捕るかというと
 無理な話だからだ。

 神巫「というか何で無いのよ、それも落としたとか言わないでしょうね?」
 黒奈「たぶん・・・異変の時に取られてた可能性がある・・・、金は落としただけだからな・・・」
 神巫「なんてこったッ!!」
 黒奈「また天界に行く事になるのか・・・?」
 神巫「最近だけで何度行ってるかしらね、天界」

 二人で同時にため息をつく、なんとも不穏な時間の流れる神社。

 ??「その必要は無い!!」

 突如神社に響き渡る声、しかし姿は見えず。

 黒奈「何処だ?」
 ??「此処だよ此処!!」

 突如境内を覆い尽くす雲が立ち込め、一閃の落雷が貫く。あまりの衝撃に思わず塞ぎ込む神巫と黒奈。
 目の前に落雷が落ちたらそりゃあびびる。
 その落雷の中から姿を現したのは、異変の元凶だった天人、敦出池床下と雷獣妖怪、神宮雨依だった。

 神巫「何の用よ、賽銭箱あげないからね」
 床下「出来れば欲しい所だけど、そうも言ってられなくなった」
 黒奈(この賽銭箱の何がいいんだろう)
 神巫「言ってられないってどういう事よ」
 雨依「この石に見覚えある?」

 そう言って雨依が手元に差し出した物は、青い輝きを放つ澄んだ石。そう、『縁結石』である。

 黒奈「あー!やっぱお前が持ってたのか!!!」
 床下「私もさっき気がついたのよ、それで・・・」
 雨依「それでこれが何かさえ分かってないクセして一回くらい使ったって怒られないよねとか抜かして
    まあ見事に何処かに繋がってそうなゲートが開いたかと思ったら実際問題何か出てきてしまった
    訳で床下は腰抜かして私も何が起こったかわからず唖然でしたしその何かはそのまま何処かに
    飛び去ってしまったし。と言う事」
 床下「ひでえ言い草だ」
 黒奈「つまり何か得体の知れない何かが飛び出して来たという事だな?」
 床下「そういう事よ、そんな訳で、この石返すついでに調査して欲しいって言うのが
    此処に来たもう一つの理由」
 神巫「自分で呼び出しておいてどうして自分で確認しないのかしら」
 床下「だって怖いじゃん」
 黒奈「別にこいつを殴ってしまっても構わんのだろう?」
 雨依「許可する」
 黒奈「許しが出た」

 指をパキパキ鳴らしながら殴る姿勢に移行する黒奈。
 床下はこの世の終わりでも見ているかのようなレベルで生気が無くなった顔をしている。

 神巫「さて、貴女は来るのかしら?」
 雨依「悪いけど遠慮しておくわ、さっきの登場で結構体力使っちゃってね、ついて行くくらいなら
    出来るけど、臨戦態勢ってなった場合に足手まといになっちゃうかもだし」
 神巫「そもそもなんであの登場方法なのよ」
 雨依「あの天人にカッコイイからだ!とか言ってやらされた」
 神巫「黒奈、もう2発追加しなさい」
 黒奈「OK!(ズドン)」


 結局、その"異界の来訪者"の調査はいつものように二人の人間がする事になった。
 得体の知れない未曾有の存在に、二人はどう立ち向かう!!?

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◇敵キャラサイド

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 ○エキストラ中ボス 腐らずこんがり芋妖怪
  
  幕揚 千草(まくあげ ちぐさ)
  Makuage Tigusa

  種族:妖怪
  能力:腐敗を操る程度の能力

  何やら森の中で腐った気配。
  心の腐った人物は苦手な彼女の直感的レーダーがそう告げる。

  このレーダーは誰を指し示しているのか・・・?
  巫女かな?天人かな?
  これは・・・・・

  詐欺師だぁああああああwwwwww

  テレレ テレレ テレレ テレレ


 ○エキストラボス 異界よりの舞姫
  
  陣内 麗羅(じんない うらら)
  Jinnai Urara

  種族:人間
  能力:暖気を操る程度の能力

  縁結石のゲートを潜り抜けて日陰の地にやってきた
  巫女のような風貌の少女。
  石に繋げられた世界とはまた別の世界の出身であるため、
  別世界に迷う込もうともその適応力は常人のそれではない。
  常識に囚われてはいけないのだ。

  千草が感じ取った気配とは黒奈だけでは無く、彼女も含まれている。
  心が黒奈とは別のベクトルで御腐りになられておられる
  少々残念気質な子。神巫と黒奈を見て一人でに暴走を始めるなど
  そのレベルも中々の様子。腐ってやがる・・・遅すぎたんだ・・・。


  異界からの来訪者だが、その手に持つのはスペルカード。
  スペルカードルールを知っているなら話は早い!!と意気込む人間達。

  張り合いのある相手と戦えると、いつに無くノリノリであった。











  ――かくして、異界よりの来訪者とガチの弾幕を楽しんだ人間達。
  麗羅はというと、なんやかんやで人間達とは意気投合したようである。
  しかしやはりその暴走っぷりは受け入れがたいものがあったようだ。
  そして、折角やってきたのだからと日陰の地を充分に満喫した後に元の世界へと帰って行った。
  

  異界の弾幕、そのようなものに若干胸を躍らせながら、この騒動は本当の意味で幕を下ろすのであった。